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「残雪の北アルプスが見たい」
横浜YY夫人たってのご希望である。「よしきた、任せなさい」と気軽に言えないのは、天候の問題だからである。直前でもない限り、あらかじめ日を決めてではバクチである。
予定の金曜日は、好天続きがそろそろ下り坂になる頃である。だが幸い、松本地方はまだ晴天の予報で、これらなら何とかなるかもしれない。
かつて美ヶ原に遊んだとき、五里霧中で展望どころではなかったのが、そもそもYYさんの残雪の北アルプスをという希望になった。だから最初の予定では美ヶ原だったのを、5月の山としては長峰山あたりが展望と同時に緑も楽しめるのではないかと提案、一路安曇野を目指すことになった。長峰山では距離が近すぎて、槍穂の峰々が常念山脈に隠れてしまうのが難点だが、逆に常念山脈の展望台としては日本一である。
長峰山にはこれまで何度も登っているが、車で頂上直下まで行ける山だから、その車道が冬の通行止めの間しか行ったことがない。つまりこの山の緑を見たことがない。車で行って、歩いて5分もかからないのではさすがに有難みに欠ける、しかし、毎度の登山道でも私にとっては新味がない。せっかく車道が通れるのなら、それを多少は利用させてもらう方法はないかと地図を眺めた。
地形図に破線はないものの、ここに踏跡くらいはあるはずだと思った尾根には立派な歩道があって、あらかじめ調べていればわかりきったことだったろうに、まあ、知らないほうが新鮮味があってよい。この道、そして帰りに歩いた廃林道はこの時季に歩くには出色といってよく、山ツツジやレンゲツツジが文字通りいろいろな色で咲いていた。頂上まで展望がほぼお預けなのもいいところだった。しかも行き帰り、ひとりにも出会わなかったのだから驚かされる。
そして待望の頂上では期待どおりの大展望だった。冬にくらべて人が多いといっても、数えられるほどであった。どうやらそれは、光城山方面からの車道が工事で通行できなかったせいもあったらしい。
この展望なら、横浜YYご夫婦も留飲が下がったことだろう。お疲れ様でした。
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