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特集「単独行レベルアップ術」の中に「単独行者におすすめの本」という項があって、山口耀久氏の『北八ッ彷徨』を紹介した。「何かいい本はありませんか」と問われて、適当な本が思いつかなかったので、編集部でこれについて書いてもらいたいと注文してくれたほうがありがたいと言ったら、山口さんの本ではどうでしょうかとなったのである。
もっともこの本は、書名の「北」や「彷徨」という文字から、いかにも内容が単独行に思われるが、描かれているのはほとんど仲間との山行である。だが、単独行者(に限らないが)が文章を書くときの参考になる部分があって、そこを取り上げた。500字という制限ではあまりに短すぎて真意が伝わるかはわからないが。
山の雑誌で「単独行」は繰り返し取り上げられるが、現在と四半世紀前の「単独行」はまるで異なるものである。それは言うまでもなくテクノロジーの進歩、ことに通信手段の発達による。現代の「単独行」を特集をするなら、そのあたりの考察があればもっと面白くなったと思う。
単独行の主眼は「自由」だが、便利がいよいよ自由を束縛しつつある現代の「単独行」特集では、編集部が意図したのであろう単独行のすすめというよりは、単独行とはこれだけのリスクを伴うのだという部分が目立っているように思った。そのうえ第二特集が「山で出会う危険生物」なのだから、この本全部を読み通すと、単独行なんて恐ろしくて金輪際ご免被るという気分になってしまうかもしれない。
https://www.yamakei.co.jp/products/2817900994.html
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