| そうした本誌の活気とともに、初めて商業ベースの出版に乗り、話題を提供したのが朽木と平木であった。 この期間、朽木は本誌には五篇の小説しか発表していないが、その間に『馬賊の唄』と題して馬賊の大頭目小日向白朗氏を主人公にした七百枚の長篇に取り組んでいた。持ち込んだ出版社から無名の朽木寒三では売れないから、小日向本人の名にしてほしいなどとクレームがついたりして仲々スムーズに事は運ばなかった。「いざとなれば『人間像』に一挙掲載する」という針山の意向を後ろ楯に、「名を捨てるぐらいなら降りる」と強気に押した結果、続編も書いて完結させる事を条件に番町書房(主婦と生活社の出版部)から出版されることになった。続編を加え千六百枚は正・続二巻として四十一年七月に刊行された。『馬賊戦記』の誕生である。これが数十版を重ねるミリオンセラーになるなどとは、作者はもとより当の番町書房すら夢にも考えてなかったに違いない。 (針山和美「『人間像』の五十年」/昭和四十年代 70号〜100号)
その『馬賊戦記』、道立図書館から取り寄せてもらってただ今読書中。いやー、千六百枚。久しぶりのヘビー級マッチ。 この前まで佐々木譲の読み残し本を何冊か読んでいたのだけど、なんか燃えませんでした。佐々木譲にも凡作はあるんだなあと実感。(←当たり前か…) というわけで、かねてよりの懸案『馬賊戦記』に踏み切ったわけです。朽木さんの本はアマゾンでも凄い値段がついていて手が出せません。道立にあって良かった。「人間像」絡みの本はかなり道立で押さえてあるみたいなので助かります。
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