| 動物を扱ったこれら六篇の小説の中で、最も早い時期に書いたのは、『ハタハタ』である。新聞の小さな囲み記事に、ハタハタ漁で遭難した漁師の遺体収容よりもハタハタをとるのを優先している漁師町のことが記されていた。 この記事に人間の生きる苛酷な営みを感じた私は、秋田県下のハタハタ研究家を訪れてその生態についての知識を得、ついで目的の漁師町におもむき、商人宿に泊って漁業関係者、遭難死した漁師の遺族たちに会って話をきいた。帰京した私は、少年を主人公にこの作品を書き上げたのである。 (中略) 鼠の生態について書かれたものを読んでいるうちに、宇和島市の沖にある戸島、日振島に鼠の異常な大量発生があったことを知り、興味をいだいた。それらの島におもむいて調査し、事実にそって執筆したのが『海の鼠』である。海を渡る鼠の群れを網にかけた漁師の話をきいた時の肌寒さは、今でもはっきり記憶している。 (「吉村昭自選作品集」第十一巻/後記)
道内の野外彫刻巡りなどに大変役に立っていた自動車なんだけど、8月末で手放すことにしました。稚内の本郷新とか、いくつか懸案事項が残っているので7〜8月で時間を見て廻ってみるつもりです。まあ、チャンスがなかったら秋冬の汽車・バス旅でもいいんですけど。 稚内方面なら苫前の三毛別(吉村昭「羆嵐」)も…ということで、図書館から『吉村昭自選作品集』第11巻を借りてきました。そこで大発見。北海道ものの『羆嵐』『羆』『海馬』はもちろん面白かったのですが、今回読み返してみて、意外に内地ものが面白いんですね。特に『海の鼠』。これ、凄いなあ。ガーンでした。
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