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やがて息子の誕生。三才になるのを待って仕事を始め、娘が小学生になったのを機に、市役所の近くに古い小さな家を買った。仕事、家事、学校の役員。息抜きは新聞の投稿と、休日の図書館通い。ここで、『文章教室』と遭遇することになる。何気なく手に取ったカウンターの、『受講者募集』の案内書にわけのわからない興奮を覚え、迷うことなく講義に臨んだ。講師の熱っぽい語り口に圧倒されたまま、会場を出るとき転職を考えていた。 とにかく書きたかった。フルタイムの仕事を止め、時間に縛られないパートタイマーに変わって間もなく、『文章教室』から発足した同人『MIDORI』を知り、門を叩く。 (峯崎ひさみ「ありがとう浦安」)
七月の千葉へ行ったのは、ひとつには、峯崎ひさみ氏の『穴はずれ』以降の作品群をライブラリー化したいと思ったからです。今まで、あまりにも〈北の沢〉物語に拘りすぎて(京極町の図書館員だったもので…)、氏の全体像を見ようとしていなかったのではないかという反省がありました。 おそらく、こういう視点を持つようになったのは、『人間像』の復刻作業が影響していると思います。千葉の朽木氏や鶴見の平木氏、あるいは、関西の佐々木徳次氏や福岡の日高良子氏といった才能たちが羊蹄山麓の御園から発行される『人間像』を舞台にぐんぐんと伸びて行く姿を目の当たりにして、私の作家や作品に(或いは郷土というものに)対する態度が大きく変わりました。 峯崎ひさみ氏の全体像…という意味では、それは私にとっては、氏の作家生活の基盤となった同人雑誌『MIDORI』の完全復刻、デジタル化なのですが、なかなか著作権許諾を取っている時間がない。今回は、峯崎氏に大きく影響を与えたと考えられるお二人に焦点をあてました。
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