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No.804 への▼返信フォームです。


▼ 「人間像」第84号 前半   引用
  あらや   ..2021/02/06(土) 18:40  No.804
  「人間像」第84号作業、始まっています。第84号は〈癌との斗い〉瀬田栄之助特集。本日、巻頭の『ガンとアポロの日記』、『病床孤読の日記』、『負け犬の日記』の三篇をライブラリーにアップしました。以降、『日没を前に』、『狐憑き』の小説二篇が続きます。

この号は針山家では欠号になっていて、北海道立文学館の方からコピーを頂き、それをベースに作業を行っています。何故針山家に無いのか? それはおそらく瀬田氏の生涯唯一の創作集『いのちある日に』(講談社,1970.11)編集のために針山家から供出されたのではないかと考えます。

『負け犬の日記』が終わったところで半ページ分のスペースができたのでしょう。そこに針山氏(だと思う)が『校正だより』という文章を書いています。これも、ある意味、瀬田栄之助特集の一環と言えなくもない内容なので以下に全文掲載してみます。

 
▼ 校正だより   引用
  あらや   ..2021/02/06(土) 18:45  No.805
   『人間像』は誤植の多いので有名だった一時期がある。今は幾らかましになったと思うのだが、まだ完全とは云いがたい。誤植の原因は原稿が判りにくい、文選が悪い、校正が不充分などであるが、いずれにしても校正の段階で完全を期さねばならないだろう。ところが、印刷所が遠いために何回も校正ができないのである。結局現在は印刷所で初校をして貰い、編集部がそのあと一回校正するだけで印刷に廻しているが、これではやはり不充分であるらしい。
 ところで、本号の瀬田、古宇のように、ルビが多かったり、古い漢字を使う人の原稿は文選も校正も非常に苦労する。そしてまた、そうした人に限って誤植を気にするようだ。今回も瀬田の原稿の表紙に、
「難しい表現や字句が多いですが、どうか、正確に印刷して下さい。御願いします。
   印刷所御中」
 と注意がきがしてあった。すると、その横に赤いボールペンで、
「著者のいう通り一生懸命やろうぜ。正確に文選するよう! 『ガン患者が……』と思うと感激す」 1/10 I・M
 と記されてあった。この雑誌は遠くはなれたA刑務所で印刷しているのだが、そこの囚人が記したのかも知れない。何かそこに通いあうジーンとした血のようなものを感じた。

 
▼ 日没を前に/狐憑き   引用
  あらや   ..2021/02/09(火) 17:11  No.806
   胃ガンと診断されたわが身であってみれば、それはもう地獄の屠殺場に撃がれたも同然であって、…

うーん、「著者のいう通り一生懸命やろうぜ」という気持ちは美しいが、冒頭一行目からの誤植はいただけない。いつもは「撃がれた」の送り仮名と漢字の形からの類推で「ああ、〈繋がれた〉ね」となるのだが、今回は、プロの出版社の校正本があるので正確度が増しました。(でも、講談社『いのちある日に』にも誤植はあったよ…)

というわけで、本日、『日没を前に』、『狐憑き』の二篇をライブラリーにアップしました。これから古宇伸太郎『暗礁』にかかります。この『暗礁』、「西えぞ地の穂足内村は石狩湾の南岸にあった」という書き出しで始まる小樽話なんですね。楽しめそう。なにか「穂足内騒動」に題材をとった作品みたいです。ヤフーの検索で「穂足内」を打ってみたら、昔のスワン社HP「おたるの青空」にアップしていた橋本尭尚の『穂足内騒動顛末記』が出て来て吃驚でした。クラウドにはまだ残っているのだろうか?

 
▼ 暗礁   引用
  あらや   ..2021/02/14(日) 09:48  No.807
  福島の地震報道をラジオで聴き続けた今朝、古宇伸太郎『暗礁』をアップしました。さすが原稿用紙150枚だけあって、五日間くらいの時間がかかりましたね。(カーリング観ていたせいもあるけれど…)
久しぶりに再会した橋本尭尚『穂足内騒動顛末記』にもけっこう見入ってしまって、第84号作業が終わったら、こちらもライブラリーに入れてみようかとも思ったんだけど、『暗礁』の完成度のあまりの高さに、『顛末記』の屋上屋は必要ないかと判断したのでした。
タイミングが良いというか、今朝の新聞には、こんなニュースも載っています。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/511148
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/511221

 
▼ 「人間像」第84号 後半   引用
  あらや   ..2021/02/17(水) 18:12  No.808
  本日、「人間像」第84号をアップしました。作業にかかった時間は「67時間/延べ日数14日間」です。収録タイトル数は「1528作品」。

●本号は「瀬田栄之助特集号」とした。長い間、胃潰瘍を病んでいたが、それは次第に胃ガンに進んでいた。この経過は、彼自身数年に亘って書いて来た「日記」の中に生々しい。去年の五月、胃ガンの手術をすることになったと伝えて来た時には、「追悼号」を準備しなければならないかと思ったが幸い手術は成功し、五○パーセン卜の生存率を得た。「生きたいならば書くのは止めろ」という医師の言葉を、初めの数週間は守っていたが、「書けないぐらいなら死んだ方がマシ」というところに彼の本領がある。まだ定かではない「いのち」と斗い、おびえながら、書き続けたエッセイ三篇と小説二篇をまとめて、「特集」と銘打ったゆえんである。また彼は天理大学スペイン語科の主任教授の重責にある。その専門分野の仕事として裏表紙広告のような、「現代スペインとスペイン語の研究」なる大著を執筆して来たが、その校正も病床で進めなければならなかった。併せて御高読いただきたい。
●もう一つは、古宇伸太郎の「暗礁」である。長い間、胸中にあたためていた題材であり、その一部は『ろんだん』に連載されたが、ここにまとめて、その成果を問うことにした。御高評いただきたい。
(「人間像」第84号/編集後記)

文学館、裏表紙のコピー作ってくれなかったので、第85号の裏表紙画像で間に合わせました。『現代スペインとスペイン語の研究』の広告、多分これでいいと思いますが、後日道立図書館で確認しておきます。今はコロナで身動きとれない。

 
▼ 現代スペインとスペイン語の研究   引用
  あらや   ..2021/02/18(木) 17:20  No.809
  上の裏表紙画像、掲示板搭載の関係で文字部分がつぶれて読みにくいと思います。何が書かれているかというと、針山和己(←ママ)氏がこの本の紹介をしています。

 人間像同人による近刊予告 〈一九七一年一月刊行予定〉
 現代スペインとスペイン語の研究
 瀬田栄之助著 大盛堂刊 A5判 一五〇〇円

 本書は、瀬田が昨年病躯を押して執筆した文字通りのライフワークである。本書は従来の無味乾燥な参考書と異り、一人の貧しいアルバイト学生に死期の迫まった教師が彼の持つスペイン語とスペインに対する全ての知識を語り伝えるといった真に独則的な手法が用いられている。瀬田は、大阪外語大と天理大でスペイン文化史と文学史の講座を持つだけあって、本書を埋めるスペインの歴史・美術・文学等々に関する多数の該博な論文は、われら門外漢にあっても大いに興味をそそられるところである。
 目下、再校の段階である。本書の発刊と瀬田の速やかなる快癒を友人の一人として待望するものである。 (針山和己)



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