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No.934 への▼返信フォームです。


▼ 「人間像」第103号 前半   引用
  あらや   ..2022/11/02(水) 16:32  No.934
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十一月より「人間像」第103号作業を再開。先ほど、神坂純郎『水脈(第一回)』をライブラリーにアップしたところです。以下、佐々木徳次『春は名のみの』、針山和己『山中にて』、金沢欣哉『温泉ノート』、白鳥昇『松露と蟹のパテ』、福島昭午『呪縛の里』、針田和明『蛇行』と小説6編が続きます。そして、巻尾はここのところお約束の『阿片秘話(第三回)』ですからね。帰って来たなぁ…という感じが半端なくする。

もう十一月か… 初雪があったり、庭の樹の冬囲いやタイヤ交換やらなきゃならなかったりで、作業時間は夏場に比べるとかなり減りますね。

 
▼ 春は名のみの   引用
  あらや   ..2022/11/10(木) 17:15  No.935
   春は名のみの風の寒さや
 谷の鶯歌は思えど

 野崎はこの歌が好きだった。この曲が流れるのは、きまって年が明けて寒い冬のさ中である。春を待つ人の心がこの歌を求めるのであろうか。前を走る車の中にいる緋沙子親子たちに、本当の春の来るのはいつのころであろうか。
(佐々木徳次「春は名のみの」)

こういう作品に感じ入ってしまうのは、年とったってことなのかな。

 
▼ 山中にて   引用
  あらや   ..2022/11/10(木) 17:20  No.936
   それにしても、吉川の単独犯だろうか。打田らと組んでの共犯なのだろうかと考えたが、もちろん結論など出なかった。ただ、なんということもなしに、吉川の単独犯だったかも知れないと思うのであった。いずれにしても、今さら罪もない遺族の人々に、苦汁をなめさせることはないと思った。彼は小笠原老人への電文を考えながら、さらにアクセルを踏みこんだ。
「オオムラセイジシノイショワ ホンニンノモノニマチガイナシ イデカツジ」
(針山和美「敵機墜落事件」)

1979年4月発行の「京極文芸」第十号ではこのようだった結末が、八ヶ月後の12月発行の「人間像」第103号の『山中にて』では百八十度異なる展開をみせます。私は京極町の図書館時代、当然『敵機墜落事件』の方を先に読んでいますから、単行本の『山中にて』に出会った時は腰が抜けるほど驚きましたね。と同時に、針山氏の作家としての力量を嫌というほど感じました。以降、どんどん針山氏にのめり込んで行くことになった忘れられない作品の一つです。

 
▼ 呪縛の里   引用
  あらや   ..2022/11/15(火) 12:48  No.937
   トーマル地域といっても、かなりの面積である。古宇川の上流にいくつかの支流がある。峠あたりが分水嶺であろう。昭和二十三年の雪解け後に、樺太引揚者十七戸が入殖した。その場所を正式の公文書で「トーマル殖民地」としている。
 トーマルの奥地は戦前も時を隔てて何戸か入殖を試みた人々がいた。いずれも敗残の憂き目にあっている。明治から大正末期にかけては山師もかなり入ったという。金床や銀床を見つけにである。たしかに金銀を含んでいたが、品位が低かった。
(福島昭午「呪縛の里」)

先ほど、福島昭午『呪縛の里』をライブラリーにアップしました。白鳥昇『松露と蟹のパテ』はすでにアップ済み。これから針田和明『蛇行』に入ります。

昔、デジタル・ライブラリー化をあれこれ模索していた頃、この第103号を実験台にしていたことを『呪縛の里』を読んでいて思い出しました。なぜ第103号だったかというと、この号が私の持っている「人間像」では最古の号だったから。「トーマル」じゃないけど、なんか、懐かしい地点に戻って来たなぁという気がしてます。

 
▼ 蛇行   引用
  あらや   ..2022/11/21(月) 14:24  No.938
   「俺もこういううちに住みたいな」と、良平がいった。
「良さん、はやく芥川賞とれよ」と、康夫がいい、「賞をとったら、夢ではないぞ」と、にやっと笑ってつけ足した。
「俺はいつも直木賞だ、芥川賞だ、といって一作完成するたびに吹聴してるんだ、ところが反響をうかがうといつも駄目なんだなぁ、(中略) 俺が『北方文芸』でさんざん痛めつけられるのもわかるな、作品がよければ評価も違ってくる筈だ、それまで書きつづけてやるさ」と、良平はいった。
「良さん、どんどん書くといい、それをまとめて本にするといいんだ、俺、百冊位さばいてやるから」と、道昭がいった。
「俺は五冊さばけるぞ」と、康夫がいった。
(針田和明「蛇行」)

『北方文芸』…には吹き出してしまった。私も、『人間像』のデジタル復刻なら喜んでやるけど、『北方文芸』の復刻なんて全然意味が見出せませんけどね。針田さんの本って、結局、この世に現れていない。「人間像」の仕事が完了して、まだ指が生きていたら、渡部秀正さんと針田和明さんの本は製本してみたい。

 
▼ 「人間像」第103号 後半   引用
  あらや   ..2022/11/30(水) 10:05  No.939
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昨日、230ページの「人間像」第103号作業、完了しました。作業時間は「174時間/延べ日数32日間」、収録タイトル数は「1979作品」。

インクが薄くOCRで読み取れず、『阿片秘話』の辺りからはほぼ手打ち作業となったのでミスが多いかもしれません。時間の割に日数がかかっているのは冬支度のあれこれに時間をとられたためです。
地球温暖化をまざまざと感じる十一月でした。昨日まで降雪がなく、せっかく作った庭木の冬囲いもネットシートの間抜けな青色をさらしていました。今朝、ようやく雪が降り始め、なんとなく冬の覚悟がついたところです。
さあ、第104号。先ほどちらっと見たのですが、小説部分の活字が幾分大きくなっている。ありがたい。インクは相変わらず薄いけど。



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