| 藤原先生へ 突然のお便り、ご迷惑をおかけします。岩谷堂町の柴田文です。今年の三月、先生にピアノの指導を仰いだものですが、ご記憶でしょうか。そのご指導の折、談笑の中で外国の探偵小説にでも登場するようなご友人のお話をされました。 わたくしは外国の探偵小説はよく存じませんが、先生のおっしゃった風貌、帽子にインバネス姿、革製のトランクを持ち歩き、その中にはルーぺやピンセットが入つているなどと、兄に伝えると、まるでシャーロック•ホームズだとたいそう喜んでおりました。見た目だけでなく、物事を筋道を立てて考えるところは探偵のようで、人間の心を大切にするところは修行僧にも似ていると聞き、わたくしを助けていただけるのは、その方しかいなレと筆を執りました 詳しくは書ききれません。どうか先生から、その方にお伝えいただき、わたくしの話を聞いてもらえるよう、お計らいいただけないでしょうか。 わたくしの人生にかかわる大問題なのです。よろしくお願い申し上げます。 江刺郡岩谷堂町五番地 柴田文 (鏑木連「イーハトーブ探偵」)
ふーん。宮沢賢治と藤原嘉藤治… 以前、啄木と金田一京助がホームズとワトスン役をやってる探偵小説(伊井圭「啄木鳥探偵處」)を読んだことがあるけれど、あれよりは「ケンジとカトジ」コンビの方がおもしろそうと感じました。事実、血圧の薬を待っている病院の待合室で一気に読了。誰か、違星北斗でもやってくれないかな…(妄言、失礼)
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