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No.470 への▼返信フォームです。


▼ 海炭市叙景   引用
  あらや   ..2018/09/17(月) 06:37  No.470
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 待合室がにぎわったのは、夜明け前と昼すぎの下りのロープウェイの到着までだった。その後、山に登る人も下る人もいない。わたしたちと共に、初日の出を眺めるために、海峡に突きでた、たった三百八十九メー卜ルの山に登った人々は、もうすベて家へ帰ってしまった。今頃はあらためて、温かい部屋で新年を祝っているだ-ろう。うらやんではいない。わたしたちとは違うというだけだ。
(佐藤泰志「海炭市叙景」)

いや、悪かった…
函館と炭鉱という取り合わせ、つまり「海炭市」というネーミングに何故か違和感があって長らく近寄らないでいたんだけれど、そんな小さなことに拘っていた小さな自分が恥ずかしい。再発見で脚光を浴びていた時に読むべきでした。いや、悪かった…

個人的には、ロミー・シュナイダーという言葉が私の脳髄のどこかに残っていたことを教えてくれた優れた小説。


 
▼ そこのみにて光輝く   引用
  あらや   ..2018/10/03(水) 10:30  No.472
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現在まで『移動動物園』〜『きみの鳥はうたえる』〜『そこのみにて光輝く』〜『オーバー・フェンス』〜『撃つ夏』と読みつないで来て、これから『黄金の服』に入るのだけど、なにか『海炭市叙景』が延々と続いているような印象です。生涯かけて〈海炭市〉を書き続けた人ですね。『きみの鳥はうたえる』がビートルズの「And Your Bird Can Sing」とか、へえーっと思うことは多々あったが、個人的には『そこのみにて光輝く』がキラッと光ったかな。というのは…、

「すぐそこだ。少しぐらい我慢しろよ」
 拓児は市が建設した六楝の真新しい高層住宅を指さす。達夫は内心驚いた。この辺一体はバラック群がひしめき、周囲は砂山だったのだ。子供の頃には近づかなかった。どの家でも犬の皮を剝ぎ、物を盗み、廃品回収業者や浮浪者の溜り場で、世の中の最低の人間といかがわしい生活があると聞かされていた。それを市が根こそぎ取り壊した。観光客のための美観とゴミ焼却場建設のために、代替え用に造った住宅だ。砂山はコンクリー卜で埋め、申訳け程度にハマナスを植えた。それからこの地にゆかりの若くして死んだ歌人の像を建てた。それも観光客のためだ。
(佐藤康志「そこのみにて光輝く」)

ああ、あそこね。



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