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▼ 青べか物語   引用
  あらや   ..2019/01/20(日) 11:04  No.491
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竹内紀吉氏(浦安図書館)関連の基礎教養として、山本周五郎『青べか物語』を今頃精密読書。

 そして****とひどい悪態をついた。
 美しく純粋な、黄金の光を放つものが毀れた。助なあこは自分を反省し、また独学に熱中し始めた。いちどならず「死んでしまおう」と思い、どこか遠い土地へいってしまおうと決心した。北海道かどこかの広い広い、はだら雪の人けもない曠野を、頭を垂れ、うちひしがれた心をいだいた自分が、独りとぼと.ほと歩いてゆく。こう想像するたびに、彼は一種の快感にさえ浸されるのであったが、現実にそうする勇気は起こらなかった。
(青べか物語/蜜柑の木)

 救いの主は五郎さんの姉であった。父親から手紙を受取った姉が、一人の娘を伴れて北海道からはるばるやって来たのである。娘は小柄な軀ではあるが、健康そうで、縹緻もゆい子より一段とたちまさっていた。実科女学校中退、年もゆい子より二つ若かった。
(青べか物語/砂と柘榴)

引用した個所は、『青べか』の中に「北海道」の文言が登場するのが面白くて個人的趣味でピックアップしただけです。『蜜柑の木』や『砂と柘榴』の作品本質とは別に関係ありませんからご注意を。

面白かった。黒澤明『どですかでん』の原作『季節のない街』も一気に行こう!


 
▼ 季節のない街   引用
  あらや   ..2019/02/19(火) 08:53  No.492
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 公演の成功を陰ながら祈り、周囲の人々に観劇を勧めた立場上、自分のことのように原作の味わいを裏切らぬ舞台に、うれしさがこみ上げて来てならなかった。ただひとつ残念だったのは老船長との挿話が割愛されていたことだ。
(竹内紀吉「〈青べか物語〉を観る」)

『どですかでん』が、他の黒澤明作品に較べて何故か印象が稀薄なのはどうしてなのだろうと若い頃から時々は思っていた。「もう一度観たい黒澤映画」があったとしたら、ベスト5には到底入りません。(『生きる』も別の意味で入らないけどね…)
たぶん、竹内氏が『青べか』の舞台に感じたものを、私も原作『季節のない街』を読んでいて感じていたのだと思います。例えば、こういう個所。

「うちの福田は大学の文科へいったんでずのよ」と光子は初めてますさんと話したときにいった、「私立ですけれど有名な大学で、入学率は東大よりむずかしいんですって、家庭の事情で中退したんですけど、教頭先生がとても惜しがって、月謝が足りないのならはくぼくになっても学問をしろって、しまいには校長先生までがたびたび勧誘しにきたそうですわ」
(「季節のない街」/「肇くんと光子」)

「プールのある家」は映像化できても、なかなか、この「光子」さんの愉快さは映像や演技では伝えられないだろうと感じましたね。(私なんか、「はくぼく」を「学僕」を通り越して「啄木」とまで深読みして布団の中で笑い転げていました)
小説という領域でしか表現しきれないものが山本周五郎作品にはふんだんに含まれていて、それが映像作品を消化不良にしたり、だからこそ映像化に挑ませるような衝動にもなったりもするのだろう。
ともあれ、一級品であることに間違いはない。死ぬ前に気がついてよかった。竹内氏に感謝です。市立小樽図書館には「山本周五郎探偵小説全集」(作品社)が入っていて、何気なくついでに借りて来た第二巻「シャーロック・ホームズ異聞」が滅茶苦茶面白いの…
作品社って、峯崎さんの『穴はずれ』の出版社ですよね。いい仕事してるなあ。



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