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「人間像」第77号作業に入りました。今日、巻頭の瀬田栄之助『太陽にさからうもの』(116枚)をアップ。
それはともかく、既成の文壇人が正真正銘の「悪漢小説《ピカレスク》」と折紙をつけた二者がここにある。中原弓彦著『汚れた土地』(副題として――我がぴかれすく――とあり)と野坂昭如著『エロ事師たち』である。 (中略) 本格的なピカレスク的考察といった厳めしい角度をぬきにしてこれらを読破したとき、敗戦後の汚辱と混乱に充ちた日本の社会をきわめてシャープな感覚の下にアラベスク模様に活字した『汚れた土地』を、さすかに中原だと感心したし、ことに『エロ事師たち』については、読者を喜ばすだけの対談屋、雑文家にすぎないとしか評価しえなかった野坂への認識を根本からくつがえし、文字通り一級文学作品として瞠目させるものがあった。 (「人間像」第77号/瀬田栄之助「寒い唇のモノローグ(4)」)
というわけで、運良く道立図書館にあった『汚れた土地』を早速取り寄せて、今読んでいるところです。大変興味深い。私は小林信彦の『夢の砦』や『極東セレナーデ』が大好きで、一時期狂ったようにW.C.フラナガンの果てまで読み漁ったものですけれど、この『汚れた土地』の存在には気がつきませんでしたね。というか、まだ頭がガキで、到底『汚れた土地』が抱えている文学空間の領域には反応もなにもしようがなかったと思います。「人間像」の仕事をやっていて良かった。瀬田栄之助や平木國夫の仕事を知った後で『汚れた土地』に出会えたことは私の幸運だと思いました。ガキのままで死なないで済んだ。
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