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No.787 への▼返信フォームです。


▼ 「人間像」第80号 前半   引用
  あらや   ..2020/11/20(金) 16:52  No.787
  本日、第80号巻頭の作品、村上英治『佩刀禁止令異聞』をライブラリーにアップしました。以降、神戸雄三『被害者』、渡部秀正(!)『招待旅行の話』、北野広『逆転』、朽木寒三『ハルピンの雪の夜に』、内田保夫『朱にまじわれ』、佐々木徳治『父の写真』、古宇伸太郎『雨の郭公』とどんどん作業を進めて行く予定です。
第80号記念ということで、いつもにはない企画があれこれ入っていて手間がかかるような気もするし、インクが第79号よりは濃いので130時間もかかるようなことはない気もする。
今、先日(11月11日)発表された国の文化審議会報告書のことを書いています。ちょうど『佩刀禁止令異聞』作業をやっていたので妙にしんみりした気持ちになった。

速報 北海道、新たな感染304人…初の300人超えで、2日連続の最多更新
https://news.yahoo.co.jp/articles/97085e39b623cc58379e1255adae81a6bcce95cc

ラジオニュースが午後二時半の時点でコロナ感染者が三百人を超えたことを報じていました。


 
▼ 招待旅行の話   引用
  あらや   ..2020/11/22(日) 16:47  No.788
   一行の乗った特急「はつかり」は、既に刈り入れを始めたみちのくの水田地帯にさしかかって居た。その頃、関根達は今夜の宿泊地、松島のパークホテルの平面図を前にして、あわただしい、しかし真剣な打合せを始めて居た。店主が参加する予定の処へ、急にその娘が現われたり、店主と息子の予定が夫婦に変って居る気まぐれの客の為に、昨夜遅くまでかかって作成した部屋割りを、もう一度、やり直さなければならぬ事になりそうだった。
(渡部秀正「招待旅行の話」)

本日、渡部秀正『招待旅行の話』をアップしました。作業は今のところ順調に進んでいます。
2020年の私は、この第80号を最後に渡部さんの作品はもうこれ以降読めないのだと知っていますから、なにか切ない気持ちで作業をしていました。切ないと云えば、特急「はつかり」の名が出て来たことも切なかったなあ。親の仕事が国鉄だったので東京の学生時代は札幌との往復は全て鉄道でした。飛行機に一回も乗ったことがない。いつもこの「はつかり」でしたね。上野から青森駅に着くまでで十時間もかかるんだけど、飛行機料金の十分の一で札幌へ帰れることは貧乏学生には有難かった。この方法以外考えたことはなかったなあ。『招待旅行の話』が見事にこの「はつかり」コースを巡っているので少しばかりセンチになった。

 
▼ 科学文学論   引用
  あらや   ..2020/11/25(水) 06:53  No.789
   文学が科学的認識でもって解釈できるということは、文学が言語というものから成りたち、言語は文学という記号によって説明されるものでことを認めることになります。さらに、文学というものは記号であると同時に、別な面から眺めれば、それは現象的には紙の上に残された、つまり物理的なものにほかなりませんし、さらに逆の立場から眺めれば、人間相互のコミュニケーションに対する重要な手段であると考えることができます。
(白鳥昇朗「科学文学論〈1〉」)

原稿の字が汚いのか、旭川刑務所の囚人が無学なのか、「文学」と「文字」の字がごちゃごちゃに植えられている。明らかにこの部分は「文学」ではなくて「文字」だろうと手直ししたい欲求に駆られるが、迂闊にそれをやってはいけないと思いとどまる。
『同人通信』にこの誤植についての白鳥氏のコメントでもあれば直せるのだが…と思って、久しぶりに『同通』も見たが言及はない。ということは、紙面にでている通りの文章で今はアップするしかない。

数十年ぶりに吉本隆明『言語にとって美とはなにか』を引っ張り出して読み返しています。「本稿は、一九六一年九月から一九六五年六月にわたって、雑誌『試行』の創刊号から第十四号まで連載した原稿に加筆と訂正をくわえたものである」とありますから、当然、白鳥氏の1968年の『科学文学論』はこの『言語に−』に触発されて書かれたものなのでしょう。当時の吉本隆明の影響力を感じます。今年は夏のNHK教育テレビ「100分で名著」で、これまた数十年ぶりに『共同幻想論』を読み返したりと、ちょっとした吉本イヤーだった。

 
▼ 「人間像」第80号 後半   引用
  あらや   ..2020/12/03(木) 11:31  No.790
  「人間像」第80号作業完了。本日、ライブラリーにアップしました。作業にかかった時間、最速の「83時間/延べ日数16日間」でした。収録タイトル数は、「1478作品」。濃いインクが本当にありがたい。

 半身を起して男は再び
「おい!」と叫んだ。男の喉声が、男の不安をさらにあふる。母の返事がにぶく伝わってきた。
「いない、やっぱりいない――」 男はとび起きて、兵児帯をまき巻き、階段をおりた。
 二日ほどまえ、足首をくじいた母が、寝床から
「いま、でていったよ」と首をのばした。
「いま?」
「そ、五分もたたないね」 腹ばいになって、雑誌をひろげていた妻の兄も、片手をついて顔をあげた。
「どこへいくって?」
「さ、なんともいわなかったね」
(古宇伸太郎「雨の郭公」)

こういうの、私小説って言うんだろうか。あまり馴染みのない分野なんですけど、変にズーンと響く重さがあったな。ましてや、私たちはすでに福島昭午『妥協』(第39号)を読んだ後の人たちですからね。とても感じ入った。80号記念ということで巻末に「総目次」が10ページ(!)に渡って繰り広げられています。この10ページのひとつひとつを全て読んでここまで来たんだ…と感無量になった。コロナウイルス「第三波」のど真ん中で仕上げたことにも少しばかり自己満足。



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