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すがぬまさんとふたり旅になってしまった木曜山行だった。それなら別に車山にこだわることもあるまいと、小淵沢駅で落ち合ったときにリクエストはないか聞いてみようと思っていた。すがぬまさんと会うのは半年ぶりだというのだから驚かされる。
ところがなんと車山に登ったことがないという。これだけ霧ヶ峰に遊びながらウソでしょ。でも、ならば初志貫徹である。観光客が多いとはいえ、霧ヶ峰でもっとも展望のいいのは、最高峰の車山に間違いないのである。なんとなれば、霧ヶ峰の他のすべての地点からは、車山の方向だけが、そのでかい図体に隠されてしまうからである。
夏には珍しい遠望のきく日だった。車山肩に登っていく車窓から四囲の展望が拡がっていく。見えるべき山はすべて見える。これは画家のすがぬまさんにとっては最高の日和であった。つい10日前に行ったばかりだという立山も見えている。もとより、こちらもひと月ぶりの、のんびりゆっくり納涼休養山歩きで、歩程は短く、頂上で長時間を過ごそうという計画である。そしてそのとおり、頂上で2時間、創作に付き合うことになった。
人が少ないに越したことはないと、肩から時計回りで登ってみることにした。こうして車山に登るのは初めてだと思う。これはなかなかよくて、頂上でリフトで登ってきた観光客と混じるまではすれ違う人もまばらだった。それにしてもさすがは標高2000m近いとなると涼しいなあ。
頂上では、3年前に登ったときに工事が始まっていた展望テラスが完成していた。頂上に居る間には、その広いテラスが無人になってしまったこともあったのだから、夏の終わりでさすがに人出も少なくなっていたのだと思う。2時間もいれば光線が変わって、北アルプスは遠くなり、八ヶ岳がくっきりとしてきた。すがぬまさんは方角を変えてスケッチである。
山全体がわずかながら黄色味を帯び始めた、晩夏の霧ヶ峰だった。
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