| 清明時節雨紛紛 路上行人欲斷魂 借問酒家何處有 牧童遙指杏花村
七言絶句だ。その詩を読み下そうと、竜崎が苦労していると、滝口が再び口を開いた。 「清明の時節、雨紛紛。路上の行人、魂を断たんと欲す。借問す、酒家いずれの処にかある。牧童、遥かに指さす、杏花の村。清明の季節、つまり春ですね。雨がしとしと降っていて、道行く私はひどく落ち込んできた……。牛飼いの牧童にちょっと尋ねる。どこか酒が飲めるところはないだろうか、と。牧童は、はるか向こうの杏の咲く村を指さす……。いや、実に味わいのある詩ですね。私の好きな詩です」 竜崎は、滝口の意外な一面を知り、驚いた。 (今野敏「隠蔽捜査8/清明」)
『隠蔽捜査7/棲月』の犯人があまりにチンケな奴だったんで、『8』も心配だったんだけど大丈夫でしたね。神奈川県警に移ったのは正解か。犯人がチンケなのは、世の中がチンケなものに変容しつつあるからではないか。
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