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▼ ミツハの一族   [RES]
  あらや   ..2015/07/19(日) 10:26  No.333
  けっこう驚いた。「ばくりや」や「てふてふ荘」の作家だと思っていたからね。こういう技が炸裂するとは考えてもいなかったなぁ。

 八尾清次郎のもとにその報せが届いたのは、大正十二年の十月初旬であった。
『ヤオシヨウイチ シロイシムラコアンべニテシス シキユウコラレタシ』
(乾ルカ「ミツハの一族」)

大正十二年、小安辺村か…

未練を残して死んだ者は鬼となり、井戸の水を赤く濁す。そのままでは水源は涸れ、村は滅んでしまう。
鬼となった者の未練を解消し、常世へ送れるのは、“ミツハの一族”と呼ばれる不思議な一族の「烏目(からすめ)役」と「水守」のみ。
黒々とした烏目を持つ、北海道帝国大学医学部に通う八尾清次郎に報せが届く。烏目役の従兄が死んだと。墓参りのため村に赴き、初めて水守の屋敷を訪ねた清次郎は、そこで美しい少女と出会う――。
(乾ルカ「ミツハの一族」帯より)

これを単なるBL小説として読むのはもったいないです。
札幌の人たちには意外と盲点かもしれませんが、この「小安辺」は「小野幌(このっぽろ)」の地名を頭に置いて読むべきではないかと思うんですね。そうすると…


 
▼ 小野幌  
  あらや   ..2015/07/19(日) 10:30  No.334
  例えばウィキペディアで「小野幌神社」をひいてみると、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E9%87%8E%E5%B9%8C%E7%A5%9E%E7%A4%BE
なかなか興味深いエピソードが出てきます。小説の中でも、札幌市と白石村を分けて書いていますが、これは正しい。小さい時、江別に住んでいたことがありますから、原始林や「みずほの沼」(と呼んでいたと思う)は、自転車に乗れるようになった子どもたちの絶好の探検スポットでした。そこに「水守」の家があったなんて…、なんとすばらしい設定なんだろう。萌えました。

今の小野幌神社には「小野幌開基百年之碑」があるみたいですね。

昔、北の大地小野幌に一人の杣夫入りて、未開の杜に斧ふるいたり。爾来開拓の人々来りて拓き、皆力合わせてみずほの池造り、豊かなる田畑となりぬ。然るにこの地にも都市化の波打ちよせ、諸人語らいて美しき街つくらむとす。今や国中の人こゝに集いて大いなる街となり、開基百年を迎う。この時に当り、先人の遺徳を偲び、古きを尋ねて新しきを知らむと、こゝに、記念碑を建立す。 小野幌の地よ、瑞穂の街たらむことを。(碑文)

ウィキペディアに募金しようと思いました。いっぱいお世話になっている。


▼ 赤いペン   [RES]
  あらや   ..2015/07/13(月) 18:18  No.331
  何か、物語はあるかい?
人が心に秘める想いを照らし、きらめかせては去る。
そうして、ペンは旅を続けてきた。
物語から物語へと……。
            ――片桐 筆――

という、扉で始まる澤井美穂の「赤いペン」。小樽の文学館というのがウットーしいけれど、それ以外はすべてOKでした! 血圧の薬を待つ病院の待合室で一気読み。中島梨絵の挿絵も品良く、そのおかげなのか、血圧も「137」などいう好数値を出し、ゆったりとした休日になりました。ありがとうね。


 
▼ 非・バランス  
  あらや   ..2015/07/13(月) 18:46  No.332
  もう一冊、心に残った児童文学を。

今年度の「京中生インタビュー」で出てきた本なんだけど、この「非・バランス」、とてもよかった!
映画化もされているみたいで、アマゾンのカスタマー・レビューなんかを読むと、みーんな映画から本への流入組なのもびっくり。でも、映画は、「みどりのおばさん=サラさん」の設定を「心優しきオカマ・バーのママ=菊ちゃん」に変えているんでしょう。大丈夫なのかな…

ま、小日向文世の熱演ってことなんかな。(朝ドラ「まれ」も、小日向、大泉の北海道勢が出ているから、惰性で見ているようなもんですけど…)


▼ 夜より黒きもの   [RES]
  あらや   ..2015/07/11(土) 19:00  No.330
   朝の六時だった。黒頭は自分のマンションでもう目を覚まし、身支度を整えていた。天気がよければ、スポーツタオルを肩にススキノの東側を流れる豊平川の河川敷公園まで軽く走り、札幌ジムの練習生たちのロードワークに合流するのだ。四時間ほどしか眠っていないが、もともと酒を飲まないからそんなに体には負担になっていない。コップに水を汲んで飲み干す。そのまま出ようとした時、電話のベルの音に引きもどされた。
(高城高「夜より黒きもの」/「猫通りの鼠花火」)

ありゃ、一回読んだ本だったかな…と思ったが、そんなはずはない。今年5月の新刊です。

ややしばらくして、ようやく気がついた。あ、第二作だったんだ。三年前の第一作「夜明け遠き街よ」のことを完全に忘れているから始末に悪い。作家の中にはときどきいますね。秘かにストーンズ・タイプと名づけている作家たち。
ローリング・ストーンズの曲って、聴いている最中はとても輪郭のくっきりしたいい曲なんだけど、レコードが終わってしまうと何も余韻が残らない。曲がかかっている現在だけが命という。高城高も似ています。読んでいる最中は、他のダサい文章(特に公務員の書いた文章とか)読みたくない、いつまでもこの物語が続けばいいと思うのですが、ついに最終ページは来るし、出勤の朝は来るのでした。

 私も八十路を迎え、身近な訃報に急き立てられるかのように薄野のバブル時代の記憶をなお書きとどめようとしている。本作品に続く一九八〇年代末期、薄野の夜の好景気は終わりのない祝祭のように盛り上がってゆく。それは黒い影を背負った虚宴とでも呼ぶしかないようなものだったのだが……。
(高城高「夜より黒きもの」あとがき)

三年後、どこで何してるのかな。



▼ バンクーバー朝日   [RES]
  あらや   ..2015/05/18(月) 17:23  No.328
  「うちは走って点を取るチームだ」
 ヨーが一塁に進んだのを見定めると、監督のハリー宮本がテディに言った。
「けれども君にはもう走る力は残っていない。そうだな?」
 テディは首を横に振ろうと思ったが、そもそもそんなことをするのさえ面倒なくらい疲れていた。それにここまで来て、嘘をついてどうなるものでもない。
「うん」
 テディはフラフラしながらうなずいた。
「だから、君がフォアボールを選んで出塁できて、次の打者がヒットを打ったとしても、君は二塁でアウトになりかねない」
「僕の代わりに誰かピンチヒッターを出すってこと?」
 するとパワーは首を横に振った。
「ミッキーに優勝をプレゼントするんだろ? ケリをつけるのは君しかいない。だけどね」
「だけど?」
「君は走れないし、体力も残っていない。バットも一度振るのがやっとだろう。だったら」
 そう言ってハリーはテディに何やら耳打ちをした。すると、それまで疲れを隠そうとしなかったテディの顔に笑みが漏れた。
 テディが何か言いかけると、
「君ならできる」
 そう言ってハリーはテディをバッターボックスへ送り出した。
(テッド・Y・フルモト「バンクーバー朝日」)

「京中生にインタビュー」の季節が今年もやってきました。まずは第一弾。映画化された「バンクーバーの朝日」のノベライズ本で読書感想文を書いた子がいて、その映画の原作本だと思って先にテッド・Y・フルモト「バンクーバー朝日」を読んでしまいました。
後日、ノベライズ本の方も読むに至って、この2冊はかなりかけ離れた「バンクーバー朝日」ものであったことを知るのですが、まあ、そこはご愛敬。テッド・Y・フルモトに巡り会ったことに後悔はありません。しびれるようないい本だった。昔、マドンナも出ていた映画「プリティリーグ」を観た時のような感動があったよ。

こういう本をいつまでも読んでいたい。


 
▼ Re:バンクーバー朝日  
  KOU   ..2015/06/01(月) 21:26  No.329
  酔ったはずみで閲覧させて頂きました。
少々気になっていた映画でしたので、良さそうな感じがして、今度DVDを借りようかと思います。
ありがとうございました。


▼ 熊撃ち   [RES]
  あらや   ..2015/04/06(月) 19:28  No.325
   与三吉は、羆を求めて山を歩きつづけた。米も少くなったが一回の食べる分量を減らして野宿を重ねた。十日の予定が、二十日近くになった。かれは、札幌郊外の山に足をふみ入れてから遂に倶知安の近くまで歩いていった。途中、雪崩の危険に身をさらされながら峯を越え、谷を渡った。が、羆の姿も足跡すらも発見できなかった。
 倶知安の町におりたかれは、半病人に近かった。足は今にも崩折れそうで、体中が熱をおびていた。かれには、再び歩いて帰る気力は失われていた。意識がかすみ、銃を肩にしていることすらわずらわしく思えた。かれは、自分が正常な気持を失っていることに気づいていた。
(吉村昭「与三吉」)

「少年探偵団」のスレッド、消しました。くだらない文章だ。

今年度の読書会「山麓文学館3」で吉村昭の「与三吉」を取り上げるので、久しぶりに「熊撃ち」一冊を読み返したのです。「与三吉」、もちろん良かった。でも、隣りの「安彦」も「菊次郎」もいいんだよね。トップの「朝次郎」もいいし、唯一の月の輪熊話(あとは全部羆話)の「幸太郎」までいいんだよね。で、いつもの結論。吉村昭の小説に滓はない。

もう、東日本大震災以前に書かれたもので、読むべきものはそんなにはないことを最近痛切に感じる。そんな作品をどんどん捨てていったら、「山麓文学館3」のラインナップができました。


 
▼ 京都  
  あらや   ..2015/04/06(月) 19:31  No.326
   あのころ、台所の冷蔵庫は、いまよりずっと小さかった。
 まだ2ドア冷蔵庫も売り出されておらず、ドアはひとつきりで、開けると、左上にちょっとした製氷室が付いていた。すぐ霜だらけになり、角砂糖ほどの大きさの氷をつくるにも、ひどく時間のかかる代物だった。
(吉田泉殿町の蓮池)

 若いころ、男は、テキ屋の下働きに雇われていた。一六歳になったばかりのころだった。
 雇い主は、「大将」と呼ばれる四〇がらみのいかつい顔立ちの持ち主で、しゃがれた大声でよくしゃべり、髪はパンチパーマ。けれども、ヤクザ組織や特定の親方の配下には加わらず、おのれ一人の口八丁手八丁、はぐれ狼の才覚で切り抜けて、好き勝手に生きていたい性分らしかった。
(吉祥院、久世橋付近)

黒川創の小説はイントロがカッコいいね。どんどん吉村昭みたいな域に近づいて行ってるように感じます。

一月頃に読んでいた黒川創「京都」なのですが、おいそれと迂闊な感想を書けない…と思ってる内に四月になってしまいました。


▼ パトリシア   [RES]
  あらや   ..2014/12/31(水) 02:43  No.321
  いい本、見つけちゃった。

12月の南京極小学校・出前図書館で、ブックトーク「じゃがいもの本」のための本をいろいろ集めている最中でした。まず、パトリシア・ライリー・ギフ「ノリー・ライアンの歌」を発見。いやー、久しぶりの一気読みでした。(「資料電子化のこれから」、書かなきゃならないのに…)

時間があればどんどん読み進むのだけど、さすがに12月はキツい。ようやく今朝、「リリー・モラハンのうそ」を読了です。これが、良かった! もう、すっかりパトリシアの虜です。明日30日が最後の出勤日なので、「ホリス・ウッズの絵」ほか4冊をかき集めて、正月休みに全部読もう。


 
▼ パトリシア2  
  あらや   ..2014/12/31(水) 03:10  No.322
  いやー、すばらしい! 森さんと話がしたい。森さん、パトリシア・ライリー・ギフのこと、知ってるだろうか…

【パトリシア・ライリー・ギフ】ニューヨーク市ブルックリン生まれ。20年間教師をしたのち、子どものための本を書き始め、60冊をこえる著作がある。コネチカット州在住
(HMVのレビュー)

ウィキペディアには。まだ書き込みはないみたい。

もう我慢できずに「ホリス・ウッズ」読み始めてしまいました。今日(31日)の汽車までに読んじゃうかもしれない。

 
▼ パトリシア・ライリー・ギフ  
  あらや   ..2015/01/02(金) 13:30  No.323
  いやー、凄い! 読む本、読む本、全然テンションが落ちない。ギフの世界に引き込まれて行く。原著の言葉がなめらかなのか、翻訳者(もりうちすみこ)の腕がいいのか、わからないが、そこら辺の日本人作家の文章なんか問題にならないくらいハイブリッドな日本語になっていて、久しぶりに本を読む楽しさを感じることができました。

仕事納めの30日の夜、なんか、右腕の、虫に刺されたような赤い斑点に気がついたのです。まあ、でも痛くもなんともないから気にしないでいたのだけど、正月の朝あたりから腕の二、三ヶ所に桜の花のように広がっていって、少しだけど、傷口が服とこすれ合った時に起こるようなむず痒さも感じだしたのが今朝のことです。どうやら帯状疱疹みたい。
今、小樽で、病院も正月ですから開いていないし… なんとか痛みの出ない内に京極に戻れればいいんだけど。ほんと、年はとりたくないですね。

読んでる本が「ホリス・ウッズ」で良かった。まだ、前向きな気持ちでいられます。

 
▼ ギフ  
  あらや   ..2015/01/04(日) 07:02  No.324
  驚きました。もしかしたら…今まで読んできた4冊、つながるかもしれない。(ちょっと「ゲド戦記」みたいな様相) この「語りつぐ者」が、最後「ノリー・ライアンの歌」に還って行くとしたら、それはたいしたことだ。私は「パトリシア・ライリー・ギフ」というひとつの物語が立ちあがる、その現場にいたことになる。それは、すぐれた物語が必ず持ってる徴(しるし)でもあります。

「語りつぐ者」だけは図書館に所蔵がなかったので、大晦日のアマゾンで買いました。送り先を、今回だけは小樽の住所にしたファインプレーのおかげで、3日の夜から読みはじめています。(「中古20円」を買ったのだけど、こんないい本に「20円」はないっしょ!)

その間に、岡本さゆり訳の「11をさがして」(文研出版,2010.9)を読んでもいるんだけど、これは少し、今まで見知ったパトリシア・ライリー・ギフの言葉とはちがうように感じました。(挿絵が「ブンダバー」の人だったせいもあるけど…) 美しい日本語と感じていたのは、翻訳者のもりうちすみこさんの力だったんですね。村岡花子じゃないけれど、優れた翻訳者に出会うというのも、優れた物語にだけ贈られた徴(しるし)と思います。


▼ 聖地Cs   [RES]
  あらや   ..2014/12/29(月) 19:42  No.320
  11月〜12月は、来年1月から始まる「倶知安と文学」2回講演(倶知安風土館)の資料づくりや、柄にもなく「資料電子化のこれから」なんて文章を書いていててんやわんやの月でした。暴風雪もあったし、そんな中で、人並みに掃除や年賀状もあったりして、けっこう今年もしんどい…と感じた師走です。いつまで、こんなこと、やってるのかなぁと思う。なんか、世の中の役に立ってる実感なんて全然ないし。

「聖地Cs」と「希望の牧場」はその頃図書館に入ってきて、それで読みました。読んだ直後は、なにかこれについて書きたい衝動がさかんに頭の中をかけめぐっていたのだけど、同時期「資料電子化のこれから」を書いていたのが悪かったのか、高度成長期のテレビの普及とか、1980〜90年代のパソコン普及とかがぐちゃぐちゃと思い出されてきて、結局、何か言いたかったのか忘れてしまったのでした。



▼ 空白の大涅槃   [RES]
  あらや   ..2014/11/04(火) 18:43  No.319
  「現存する狩猟民を研究するとそれがわかる。じつは、狩猟時代の生活が、殺伐、窮乏と思うのは、農耕に入った人類が、その足場を突き崩されまいとして作り上げた偏見以外の何ものでもない。さもなければ、たとえば日本列島に八千年以上もつづいた縄文文化が説明できない。それを、われわれは、文化の停滞というが、そうではなくて、進歩する必要がないほど当時の生活が充実していたことの証拠ではないかとね、あたしは考えているのですよ」
(荒巻義雄「空白の大涅槃」)

もう二年間くらいになるのかな。たらたらと少しずつ読みつないできた「空白」シリーズも、これにて大団円。渡島半島・大千軒岳から始まった物語(空白の十字架)が、まさかマゼラン星雲の果てで終わるとは思ってもみなかったよ。でも、いろんなことを勉強したなぁ。中でも「インド」に対する知見がぐぐっと拡張したのが嬉しい。堀田善衞の昔から椎名誠まで、「インド」本って手には取るけど結局何が面白いんだか全然わかんない、イメージ湧かないで、放り出してしまうんですね。その点、この「空白」シリーズの流れの中で登場する「インド」はじつに魅力的でした。あっ、もうひとつ。「ピラミッド」もじつは苦手でしたけど、こちらもすっきりです。

あと、もうひとつ。九月頃、噂の中島正「都市を滅ぼせ」を読んでいたんだけど、その文明史観が、上に引用したような荒巻の文明史観に似ていて、けっこうタブりながら読めたのが面白かった。「都市を滅ぼせ 人類を救う最後の選択」もなかなかすごいですよ。倉本聰が講演などでこの本に言及したらしく、図書館にも問い合わせが去年あたりから度々あったのだけど、なにせ絶版本。アマゾンで中古に1万7千円もの値段が付いていて田舎の図書館には手も足も出せないのでした。舞字社での復刊の報を聞いて、喜び勇んで発注した次第です。



▼ ケンジとカトジ   [RES]
  あらや   ..2014/09/06(土) 10:52  No.318
   藤原先生へ
 突然のお便り、ご迷惑をおかけします。岩谷堂町の柴田文です。今年の三月、先生にピアノの指導を仰いだものですが、ご記憶でしょうか。そのご指導の折、談笑の中で外国の探偵小説にでも登場するようなご友人のお話をされました。
 わたくしは外国の探偵小説はよく存じませんが、先生のおっしゃった風貌、帽子にインバネス姿、革製のトランクを持ち歩き、その中にはルーぺやピンセットが入つているなどと、兄に伝えると、まるでシャーロック•ホームズだとたいそう喜んでおりました。見た目だけでなく、物事を筋道を立てて考えるところは探偵のようで、人間の心を大切にするところは修行僧にも似ていると聞き、わたくしを助けていただけるのは、その方しかいなレと筆を執りました
 詳しくは書ききれません。どうか先生から、その方にお伝えいただき、わたくしの話を聞いてもらえるよう、お計らいいただけないでしょうか。
 わたくしの人生にかかわる大問題なのです。よろしくお願い申し上げます。
                   江刺郡岩谷堂町五番地 柴田文
(鏑木連「イーハトーブ探偵」)

ふーん。宮沢賢治と藤原嘉藤治… 以前、啄木と金田一京助がホームズとワトスン役をやってる探偵小説(伊井圭「啄木鳥探偵處」)を読んだことがあるけれど、あれよりは「ケンジとカトジ」コンビの方がおもしろそうと感じました。事実、血圧の薬を待っている病院の待合室で一気に読了。誰か、違星北斗でもやってくれないかな…(妄言、失礼)



▼ 永遠の〇   [RES]
  あらや   ..2014/06/02(月) 16:23  No.314
  「出世だって――戦争しながら?」
「穿ちすぎかもしれないけど、そうとしか思えないフシがありすぎるのよ。個々の戦いを調べていくと、どうやって敵を撃ち破るかではなくて、いかにして大きなミスをしないようにというのを第一に考えて戦っている気がしてならないの。たとえば井崎さんが言ってたように、海軍の長官の勲章の査定は軍艦を沈めることが一番のポイントだから、艦艇修理用のドックを破壊しても、石油タンクを破壊しても、輸送船を沈めても、そんなのは大して査定ポイントが上がらないのよ。だからいつも後回しにされる――」
「でも、だからって、出世を考えていると言うことはないんじゃないかな」
「たしかに穿ちすぎた考えかも知れない。でも十代半ばに海軍兵学校に入り、ものすごい競争を勝ち抜いてきた海大出のエリートたちは、狭い海軍の世界の競争の中で生きてきて、体の中に出世のことが染みついていたと考えるのは不自然かな。特に際立った優等生だった将官クラスはその気持ちが強かったように思うんだけど――。太平洋戦争当時の長官クラスは皆五十歳以上でしょう。実は海軍は日本海大海戦から四十年近くも海戦をしていないのよ。つまり長官クラスは海軍に入ってから、太平洋戦争までずっと実戦を一つも経験せずに、海軍内での出世競争の世界だけで生きてきた――」
 ぼくは心の中で唸った。姉の意外な知識の豊富さにも驚かされたが、それ以上に感心したのが、鋭い視点だった。
(百田尚樹「永遠の〇」)

私も感心しました。浅田次郎「終わらざる夏」以来の感心かな…


 
▼ 桐島、部活やめるってよ  
  あらや   ..2014/06/02(月) 16:36  No.315
  「クロス・ファイアー」、「永遠の〇」、「桐島、部活やめるってよ」、「ウルルの森の物語」、「旅猫レポート」、「私の頭の中の消しゴム」、「カノジョは嘘を愛しすぎてる」、「モルフェウスの領域」、「マナは海に向かう」、… 今年の読書感想文コンクール入賞作の作品、なんか、読んでない本が多く、今、あたふたと読書中です。やはり、去年のドタバタ図書館がこんなところにまで影響を及ぼしているのかな。(とは言っても、去年のことを言うのは、これが最後ですけど。元凶は除去され、もう図書館から消えたのだから、これ以上あれこれ言うほどヒマじゃない)

今回のラインナップの中で「!」を感じたのは、やはり「永遠の〇」でしょうか。入賞者14人の内、2人がこの「永遠の〇」で賞を取っているという町内ベストセラー。映画の影響かどうかはインタビューしてみないとわからないけれど、映画観ないで先に本で読み始めた身には、小説の完成度が圧倒的に高く、この主人公「宮部久蔵」の真の姿が少しずつ露わになって行く高度な展開を、映画はどうやって映像化するのかなと思いました。

「桐島」はなぁ… 技巧にすぐれた小説であることは認めるけれど、私には、もうこういうのにつきあっている時間がないよとも感じた。(「あまちゃん」にはつきあったくせに…) エルキュール・ポワロも言っている。「どんな人だって、自分が若かった時代がいちばん良い時代だったと思ってるんですよ」。「太陽の季節」、「限りなく透明に近いブルー」、… たった一度きりの自分の青春が大事な気持ちはわからないでもないけれど、だからといって、こういうのを小説に書き残したい気持ちはわからない。十七、八で学校教師を志す奴と同じくらい、わからないなぁ。

 
▼ 旅猫リポート  
  あらや   ..2014/06/02(月) 19:46  No.316
   フェリーの口から出ると、眼前にぱきっと青い空が広がった。
「いよいよ北海道上陸だよ、ナナ」
 何だか地面が平らでだだっ広い土地だね。窓から見える景色は普通の街並みなんだけど、空間にやたらと余裕がある。道幅も東京の辺りよりずっと広く取ってあるようだ。
 しばらく走ると景色が郊外になった。そうするとますます広々として気分がいい。車もそんなに走っていないし、ゆったりとしたドライブが楽しめそうだ。
 旅のお供の音楽は、今日もやっぱりハトが出そうなあの曲から始まった。
 道端には紫色の花と黄色い花がまぜこぜになって咲き乱れている。好き放題に生えているので、花壇ではなく野の花らしい。
(有川浩「旅猫リポート」)

北海道話だったのね。

朝井リョウの方が文学性を感じるのだけど、なんかな、愛嬌というか、パッケージリング(←そんな英語、あるのか?)というか、そんなんで、つい有川浩の方に流れちゃいますね。「桐島」の帯、「17歳が 踏みだす一歩は 世界を またぐほど 大きい」とか、「ページのどこかに、17歳のあなたがきっと見つかる!」とか…、センス、もう古い。

 
▼ マナは海に向かう  
  あらや   ..2014/06/24(火) 06:01  No.317
  インタビューは先々週で全員終わっているんだけど、先週初めの月曜日に「国策紙芝居」の講演が入って、なんか、それ以降文章化が中断したまま今に至っています。(もう月末休館日か…)

今年も感想文にとりあげられた本は全部読んだけれど、(「永遠の〇」はまぁ置いといて)個人的に「おっ!」と思った本が一冊。喜多嶋隆「マナは海に向かう」。なにがカッコいいといって、各場面、場面でバックに音楽が流れているんだけど、その曲が妙に私の好みと合うんですね。たとえば、元ボクサーの茂さんが自分の過去を語る場面では、ボズ・スキャッグスの「スロー・ダンサー」が低く流れはじめるとか。語り終える時には「ハーバー・ライツ」とか、けっこう技が細かいんだよね。(昔のレコード、聴きたくなった) 世代的には村上春樹だと思っていたのだが、なんか村上春樹だとジャズ臭い(進駐軍臭い)んだよね。微妙にロックしない…というか。

何言ってんだかわからなくなってきたので、やめます。文章化、急がなくては。7月になっちゃう。








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