| 待合室がにぎわったのは、夜明け前と昼すぎの下りのロープウェイの到着までだった。その後、山に登る人も下る人もいない。わたしたちと共に、初日の出を眺めるために、海峡に突きでた、たった三百八十九メー卜ルの山に登った人々は、もうすベて家へ帰ってしまった。今頃はあらためて、温かい部屋で新年を祝っているだ-ろう。うらやんではいない。わたしたちとは違うというだけだ。 (佐藤泰志「海炭市叙景」)
いや、悪かった… 函館と炭鉱という取り合わせ、つまり「海炭市」というネーミングに何故か違和感があって長らく近寄らないでいたんだけれど、そんな小さなことに拘っていた小さな自分が恥ずかしい。再発見で脚光を浴びていた時に読むべきでした。いや、悪かった…
個人的には、ロミー・シュナイダーという言葉が私の脳髄のどこかに残っていたことを教えてくれた優れた小説。
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