|
すがぬまさんの奥三河神野山、おとみ山の恵那笠置山、そして名古屋のNさんの瀬戸猿投山と、毎年計画してきた「エピソードのある山旅」、さて今年は誰のエピソードに焦点を当てようかと考えた。
それで思いついたのが、去年の秋、信州2か所で展覧会を開いた中村好至恵さんのエピソードであった。というか、その展覧会そのものがエピソードになるではないかと考えたのである。
安曇野と小川村で開催された展覧会でも、我々にとって珍しいのは小川村で、展覧会がなければわざわざ行くことがなかっただろうところである。そもそも、その小川村が北アルプス北部の展望で知られ、さらに桜の時季こそが見事であることを私が知ったのは、中村さんが小川村で展覧会をするきっかになったという、東京から原村に移住した友人のHさんをたよって、彼女がスケッチ旅行でこの村を訪ねたときの写真を見せてもらったからだった。これぞまさしく桃源郷、こんなにきれいなところがあるのか、とその時感嘆したのである。
中村さんの展覧会の開催中、私は4度小川村を訪れたが、いずれもはかばかしい展望には恵まれず、むろん秋では桜を楽しむべくもない。そこで本命は小川村の桜とし、時期については、村のサイトでおおよその開花期を調べ、4月の半ばに決めた。宿泊するのは、秋にも泊まった、村の最高所にある宿で、展望も食事も最高の「星と緑のロマン館」が予約できた。
それで年始めに参加者を募ると、すぐにこれまでの旅のご常連で満席となってしまったのは、仲間内の旅なのだから当然ではあった。
--------------------------------------------------------
初日、各方面からやってくる人たちとの合流時間を調整をすると、行きがけの駄賃の山歩きをするにしても、どうしても歩き出す時間は遅くなってしまう。昼飯は山のてっぺんで、というのが私の山行の基本的なスタンスで、となると選択肢はぐっと少なくなる。
それで思いついたのが、松本市四賀の富士塚山だった。4年前の同じ時期に歩いてとても良かったので、もう一度歩きたい山のリストに入っていた。
1時間足らずで登れ、道はごく歩きやすく、頂上の桜並木越しの北アルプスが見事で、しかも訪れる人はほとんどいないという、なんだかウソのような山である。
泊まりを伴う山旅では、悪天で中止というわけにはいかない。目まぐるしく変わるこの春の天気だったが、幸いにも我々の2日間には好天の予報が出た。
これなら、富士塚山の魅力の二大要素、桜と北アルプス展望が両方楽しめるかと思ったが、あいにく、好天ではあっても北アルプスには雪雲がまとわりつき、桜は満開にはほど遠かった。
ま、しかしそんなことを嘆くのは贅沢というもの、久しぶりに顔を合わせた皆さんが、横並びになってしゃべりながらのんびり歩ける道、北アルプス方面以外はすべて青空で、しかも誰ひとりいない貸切の山だったのだから。
|
|
|
|