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モリノブタさんのリクエストで冷山へ行くことになった。名前からして涼し気なこの山、これまでにも盛夏に登って涼を味わったことがある。
この計画に鉄人M夫妻が参加することになった。東京からの日帰りではどうしても出発が遅くなる。そこで少し行程を短くするコースを設定した。
驚くべき美しさの苔の森を鹿道を適当に拾って歩いていく。最終的に取りつく予定の西尾根に斜めに近づこうとして登っていくと、眺めのよい溶岩崩れ帯に出た。この山では展望を期待していなかったので、これはラッキーと岩から岩へとグイグイと登っていった。いよいよ眺めはひろがる。
これが大失敗だった。上部に行くとシャクナゲ混じりのハイマツが岩の上を占領していることが多くなった。岩と岩の間は大きく落ち込んでいてうかつに足を入れられない。活路を探して右往左往したが、そもそもそんなものがあるはずもない。
撤退を早く決断すべきだったのを躊躇したのは、はっきりした径のある稜線に出てしまったほうがその後が圧倒的に安全だからである。しかもあと標高差で50mもないところまで達していた。さらにそれまで登ってきた溶岩帯を下るのは相当に危険なことも判断を鈍らせた。
結局、たった50mでもその藪を突破するのは無理と判断、実に厳しい牛歩の撤退が始まった。展望がいいだけに西日がもろに照り付ける。そのうえ風もない。肌がジリジリと灼けるのがわかる。冷山ではなく熱山である。ただでさえ暑さに弱い私は半分熱中症のようになって、わずかにあった木陰でようやく一息つく始末。とにかく登りの倍以上の時間をかけてなんとか安全な森林帯まで下った。
しかし安全といっても森には夕闇が迫っていた。後で駐車場までの登り返しがあろうとも、まずはもっとも近い車道までたどり着こうと急ぐ。もう苔のすばらしさを愛でる余裕などない。
ようやく車道に飛び出したときすでに18時半を過ぎていた。あと10分遅ければ森の中は完全に暗くなっていただろう。
なんと山中8時間、近来稀にみるというよりは、自分にとってはおそらくもう2度とない苦難の長丁場だった。
16時台の電車で帰京するはずだった鉄人M夫妻を小淵沢駅で降ろしたのはすでに20時半を過ぎていたのだから、帰宅は深夜だっただろう。とにかく皆さん、お疲れ様でした。
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