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読書日記―13 >>
クマジィ 2023/07/31(月) 03:20
.gif / 2.3KB 今年の夏は酷暑が続いていて雨予報はしばらくなさそうだ。
こういう時の私の熱中症対策は涼しい早朝に軽運動と快眠快食、そして街には出歩かず、クーラーの効いた書斎でのんびりと読書に耽ることが健康増進の第一義と思っている。

●保阪 正康著:「Nの回廊/ある友をめぐるきれぎれの回想」 講談社

【「蒸気機関車は六輛ほどの車輌を率いながら走っている。僕とすすむさんは最後尾の客車のデッキに立ちながら、木製の扉の前に身を寄せていた。通勤の大人たち数人がやはりデッキに立っていて、新聞を読んだり、タバコの煙を吐きだしたりしている。/誰も口をきかず、列車の揺れに身を任せていた。」
昭和27年春、札幌の中学に通うため汽車に乗った二人の少年は、30年余を経たのちに再会します。ひとりは気鋭のノンフィクション作家になり、ひとりは学生運動の闘士から経済学者、さらには保守的思想家へと転じていました。
再会してから30年、突然の別れがやってきます。すすむさん=Nが自裁したのです。

「斎場の隅にいる私たちのところに近づいてきたのは、Nの兄のMさんであった。/ああそういえばもう六十年以上も会っていない。しかしその面差しは依然として柔らかく、そして人を包みこむようであった。外套を脱ぐなり、握手を求めてきて、私の顔を見るなりその穏和な顔に涙が流れるのを隠そうとしなかった。私も涙が止まらなくなった。/「十三歳のときからの友だちだったんだからね……」/Mさんの言葉に、私のなかで耐えていたものが一気に爆発した。/私は人目も憚らず涙を流しつづけた。そして二人でふたたび棺に近づき、蓋を開けてもらい、その顔を見つめつづけた。いっしょに見ていると、表情は動き出しそうで、目を細めて口を尖らせて、吃音気味に話すあのころに戻ったように感じられた。私はMさんと札幌の、白石と厚別の思い出話を、Nに聞こえるように、なんどもくりかえすように話しつづけた。私はNが亡くなったとの報に接してから初めて、悲嘆という感情に触れた。」
あのときのすすむさん=Nの眼に映じていたものはなんだったのか……。不意にいくつかの光景がきれぎれに甦り、その呟きを心耳にふたたび聞いた著者はさながら廻廊を経めぐるように思いを深め、60年の歳月を往還しながら友の内実に触れるべく筆を進めていくのです。−本の紹介よりー】

毎週火曜日の早朝ウオーキングの際、FM東京の5時半から始まる政治学者中島岳志氏の番組を聞いていたら著書を紹介していたので早速購入して読んだ。Nとは西部 邁氏で日本の評論家、経済学者、保守思想家。東京大学教養学部教授を歴任。
平成30年11月、多摩川で自死する。著者の本は数冊読んでいたこともあり、Nとは中学時代からの友人だった保坂氏の著書は興味があり、難しいことは分からないが自死するまでの過程にはどんな悩み・問題を抱えていたのかとても興味があった。【20230731(月)】



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