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▼ 「人間像」第138号 前半   引用
  あらや   ..2025/08/20(水) 16:49  No.1219
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針山さんの小説がない「人間像」第138号作業が始まりました。第138号の作品群は、日高良子『残照の果てるまで』、葛西庸三『模索の中で』、佐々木徳次『ラストの歌へ』、北野広『羽搏き』、丸本明子『土龍』、内田保夫『本棚』と続きます。

「あき子、避病院にいる看護婦さんを知っているか?」
 と問われた。
「ううん、知らない」
 あき子は首を横に振った。
「大島医院の看護婦さんだけど、避病院の一室を借りて通勤しているんだ。とても頭の良い人でね。何でもよく知ってるよ。あき子もあの人と友達になるといい」
 桂一は思いなしか頬を紅潮させているように見えた。
「へえー、そうなの。お兄ちゃん、どうしてその人を知ってるの?」
「うん。青年団の連中が時々遊びに行っては、いろいろ話をするんだよ」
「何歳くらいの人なの?」
「そうだな、二十七か八くらいかな」
「ふうん。でも、そんな年上の女の人と友達になったって……」
(たいして面白くもないじゃあないの)
 あき子はあまり気乗りがしなかった。
「妹がいる……と話をしたら、瑞枝さん……その人、新谷瑞枝というんだ。是非会いたい、お友達になって欲しいって言ったんだ」
(日高良子「残照の果てるまで」)

本日、『残照の果てるまで』を人間像ライブラリーにアップしました。作品に「新谷」さんが登場したの、針山和美『三年間』に続いて、これで二度目。

 
▼ 模索の中で   引用
  あらや   ..2025/08/23(土) 08:49  No.1220
  ――お早ようございます。
 最近漸く自分の生活する場所として落ち着くようになった職員室へ、耕治はいち礼をしながら入った。
 目が細く何時も笑っているような表情をしている熊野校長が顔をあげ、
――やあ、お早うございます。峯崎先生、今日は早いですね。
といって耕治を迎えた。桧森先生は職員室の右隅にある謄写版で印刷の仕事をしていた。
――ゆうべ、遅かったんでしょう。ひと眠りして目覚めたら、峯崎先生が部屋の中を歩き廻る音がしてましたよ。
――ええ、ちょっと書き物しようと思っているもんですから。ぼく達の住宅は、素通しの一軒家みたいものですからね。
 耕治と桧森先生は目を見合せて小さく笑った。
(葛西庸三「模索の中で」)

おや、「峯崎」さんだ。

 
▼ 千歳着陸一番機の正体   引用
  あらや   ..2025/08/30(土) 11:08  No.1221
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 ――さてここに、まことに不思議な飛行機、10式艦上偵察機に就いて申し述べておきたい。私が死んだら、もう誰も知る人も無くなるであろうと思うからである。私が10式艦偵について詳細に書くのは、これがはじめてであり、また終りでしょう。
(平木國夫「千歳着陸一番機の正体」)

うーん、久しぶりの上出松太郎。これを何と言えばいいのか。今でも、さい果ての空に生きる…以外、私には言葉が見つからない。あれこそ名作。

作業しながら、私は武井静夫さんの仕事を思っていました。時間が経てば、繕ったものはいずればれる。今、第138号作業を終わらそうと急いでいます。それは、探していた沼田流人『浮浪の子』が見つかったから。早くそちらの作業に移りたく、でも平木さんの仕事に手抜きはゆるされず、と贅沢な悩みの今週でした。

 
▼ 「人間像」第138号 後半   引用
  あらや   ..2025/08/31(日) 16:35  No.1222
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「人間像」第138号(164ページ)作業、終了です。作業時間は「57時間/延べ日数12日間」。収録タイトル数は「2671作品」になりました。裏表紙は前号と同じ『遙かなる道』ですので省略します。

★前号に引続き執筆者の広がりは続いており、喜ばしいことだが、それにしても心配は健康のことである。はずかしながら今回もベッドの上でこれを書いている。校正の作業は家内にやって貰った。お互い体は大事にしたい。
(「人間像」第138号/編集後記)

お互い体は大事にしたい…か。こういうユーモアがいつも針山さんの小説にはあって、私は大好きです。

画像は大正10年8月16日の「東京日日新聞」八面。第138号作業が無事終わったので、直ちにこちらの作業にかかります。報告は読書会BBSの方で。



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