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▼ 「人間像」第150号 前半   引用
  あらや   ..2026/05/19(火) 17:15  No.1300
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「おい、パン屋の息子」
 ぼくは小窓を少し開けて声をかけた。
「あッ」
 びっくりしてパン屋の息子は鳥篭を落としそうになったが、案外平気な顔でふり返り、どこで声がしたのか分からずきょろきょろとあたりを見回している。
「お前の頭の上だ。ここだ、ここだ」
 小窓のガラスをこつこつと叩いて合図すると、やっと気がついてこっちを見上げた。
「ああ、そこでしたか」
 パン屋のせがれは健康そのものの日焼けした顔にまっ白な歯を見せてこちらを見上げた。半分は警戒心のまざったさぐるような笑顔で、
「モガキさん、ですね……」
(朽木寒三「リリウ・エ」)

第150号作業、スタートです。全体は三部構成になっていて、第一部がレギュラーの小説作品。第二部で「創刊50年特集」。第三部でエッセイ・連載ものなどといった造りになっています。久しぶりの296ページ。今、そのトップバッターの朽木寒三『リリウ・エ』を人間像ライブラリーにアップしたところです。小説作品は『リリウ・エ』に続いて、日高良子『女のふるさと』、千田三四郎『まなざし』、丸本明子『七曲り』、内田保夫『花語らず』、矢塚鷹夫『蜘蛛の糸』、北野広『十二月二十三日』となっています。さて、それでは、原稿用紙150枚の大作『女のふるさと』へ。

 
▼ 女のふるさと   引用
  あらや   ..2026/05/27(水) 11:33  No.1301
   両手に提げた荷物が重い。駅前の車寄せに数台のタクシーが並んで客待ちしていた。一番前にいた車は老夫婦を乗せて走り去った。二番目の車がスーッと寄ってきた。今度は自分の乗る番だと思った。その時、
「こっち、こっち」
 誰かが呼んでいる。
「こっちだよ、伊佐ちゃん」
(日高良子「女のふるさと」)

うーむ、久しぶりに「人間像」らしい整った作品を読んだという感じ。考えたら、日高良子さんも自分の作品を単行本にまとめることをしない作家さんですね。「人間像」には二系統あって、内田保夫さんや金澤欣哉さんのように発表した作品をきちんきちんと単行本化する人たちと、福島昭午さんや土肥純光さんのように単行本化には全く無頓着な人たちがあるんです。日高さんも後者の一人ですね。それだけ「人間像」という舞台に自信を持っているってことなのかな。五十年前のデビュー作『みかん』以来、節目節目で日高さんの作品が載るとバーッと同人たちの間に緊張感が走るんですね。そして、次号の同人たちの作品は必ずビシッとしたものに変化しているんです。針山さんの作品にも同じような効能があるけれど、針山さんの小説がなくなった今、第150号に『女のふるさと』が載った意味は大きい。

 
▼ まなざし   引用
  あらや   ..2026/05/28(木) 11:32  No.1302
   晋作は『街と村』を女のひとに譲って、教えられるままに同じ著者の『青春』を係から借り受け、ふたりで階段をのぼった。閲覧室になっている大広間のテーブルに、離れかげんに並んで腰を下ろした。室内には四、五人しかいなかった。女のひとは顎をしゃくって背後の異様なものをさした。そこが時計塔の下に当たるらしく、金網に入れた十数個の漬け物石みたいな岩石が、ぶざまに吊りさげられている。
「あれが大時計を動かす力になるそうよ」
(千田三四郎「まなざし」)

戦前の、時計台に市立図書館があった頃の光景が描かれていて興味深かった。もう少し長かったならなあ…と思いました。創刊50年特集号ということで「原稿用紙40枚以内」みたいな縛りがあったみたいですね。じゃあ、『女のふるさと』は何なんだ(笑)

 
▼ わがあゆみ   引用
  あらや   ..2026/06/03(水) 17:58  No.1303
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〈苦節十年〉――何か懐かしい響きさえ感じられる。
〈苦節五十年〉――この言葉には何を感じれば良いのか。

この言葉が載った針山和美『「人間像」の五十年』は五月段階で出来ていたのです。そして今日、針山和美『わが五十年』をライブラリーにアップしました。ここから同人21人の〈わがあゆみ〉が始まります。『わが五十年』を見ていただければおわかりになると思いますが、この〈わがあゆみ〉には同人一人一人の「現在の」写真が付いているのです。表や図版も多く、じつは、この画像データを作るのにこの四、五日間あたふたしていました。64個の画像が必要だったのですが、まだ20個ばかりを残しています。取りあえず〈わがあゆみ〉部分は用意したので『わが五十年』に踏み出した次第です。近況報告でした。

 
▼ 同人通信 238   引用
  あらや   ..2026/06/16(火) 14:25  No.1304
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 そこには、本誌はもちろん、「同人通信」という別冊機関誌が、同人の献身的な手作業によって二三七号も発行されてきたという貴重な実績が、「文学する仲間」としての連帯感の大きな支えになってきたともいえる(もしかしたら、朽木、平木、千田さんらが未だに同人であり続けるのも、「同人通信」に象徴されたこの連帯感なのかもしれない)。
(金澤欣哉「たどたどしい歩み」)

そうですよね。もうプロの物書きとして自立しているのに、誰一人「人間像」同人を離れない。嬉しそうに札幌の「創刊50年・150号記念同人会」に横浜や奈良から集まって来るんだものね。午前中、庭の雑草取りをしている時に、ふと、「同人通信」238のあれ、復刻してみようかな…と思いました。

〈わがあゆみ〉は順調に進行中です。針山和美から始まって、朽木、福島、内田、佐々木、平木、千田、日高、丸本、金澤まで来て、これから黒川、村上、佐藤修子、上沢、葛西、佐藤瑜璃、細川、堺、井内、三浦、土肥と続きます。写真入りなので、凄く楽しい。



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