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No.1183 への▼返信フォームです。


▼ 「人間像」第133号 前半   引用
  あらや   ..2025/04/19(土) 18:44  No.1183
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 夜明けが近いのか障子に薄明りが差込む。
 蒲団の温もりの中でぐずぐずとしている。
 六十年前と同じ離れの八畳の部屋に泊まっている。
 南天の枝から、雪の落ちる音がする。
 六十年前も同じ音を聞いた。
(丸本明子「独言」)

本日、丸本明子『独言』、人間像ライブラリーにアップしました。「人間像」作業、再開です。
第133号は、丸本明子『独言』の後、春山文雄『オートバイの女』、北野広『新米教師奮戦記』、葛西庸三『屈折した狭間の中で』、村上英治『高瀬川(二)』と続くのですが、特筆すべきは村上英治さん。第133号170ページの内、80ページが『高瀬川』なんですからね。つい先日まで『北浜運河』をやっていた身としては辛いものが少しだけある。2012年から二十年前にまたタイムスリップして来たようで頭がくらくら。


 
▼ オートバイの女   引用
  あらや   ..2025/04/21(月) 10:53  No.1184
   ここは閑静な住宅街である。しかも土曜日の早朝で、新聞や牛乳配達の自転車の軋む音が時折するほかは、森としていた。
 弘恵の乗ったオートバイが音を鎮めながら走りだしたのは、ちょうど午前六時である。
 母の時江がひとり見送った。
(春山文雄「オートバイの女」)

久しぶりに老人ものじゃない作品ですね。オートバイの女が出発しました。この作品は後に針山さんの第七創作集『白の点景』に纏められるのですが、この本が創作集としては最後の本になります。これ以後はまるで遺言状みたいな『わが幼少記』とか『ボボロン雑記』があるばかりで、作品を描く力が次第に衰えて行く姿に私はいつも涙するのです。

なぜ針山さんは創作の手を止めて『わが幼少記』を書く気になったのか、少しだけ感じることがあります。この第133号のあと、第135号は「針田和明追悼」、第140号は「白鳥昇追悼」、第141号は「竹内寛追悼」、第144号は「土肥純光追悼」号とかつての同人たちの訃報が続くのです。なにか思うところがあったのではないでしょうか。

 
▼ 高瀬川(二)   引用
  あらや   ..2025/04/30(水) 18:46  No.1185
   加吉は振れ売りの女の声にうっすらと眠りから覚めた。下肥の臭いがした。田仕事のだんどりを考えながら寝返りをうった。こむらが硬く張っている。
「花いりまへんかあ」
 やわらかい女の声が近くなった。戸外に人の声がしている。加吉は聞くとはなしに耳を澄ました。耳馴れない言葉だった。加吉は跳ね起きた。
 京の朝なのだ。
 宿の天井に水の影が明るくゆれている。加吉は開け放ってある窓から軀をのり出した。
(村上英治「高瀬川(二)」)

と、ここから80ページ、活字びっしりのの高瀬川の流れが始まるわけですね。うー、六日間もかかってしまった… 本日、人間像ライブラリーにアップです。

今、桜と梅が一緒に咲いてます。連休の人混みが終わったら、「彫刻の設計図」展に行ってみよう。雪のない道路はありがたい。

 
▼ サイパン日記 〈五〉   引用
  あらや   ..2025/05/05(月) 09:29  No.1186
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『高瀬川』を終え、連載ものに入ってます。日高良子『八百字のロマン』、金沢欣哉『おんせん万華鏡』と来て、今、神坂純『サイパン日記』をライブラリーにあげたところです。この後、新連載の朽木寒三『柚木完三の青春日記』に入ります。昭和二十一年の青春ですからね、なかなか興味深い。

第十一 決戦間傷病者ハ後送セザルヲ本旨トス。負傷者ニ対スル最大ノ戦友道ハ速カニ敵ヲ撃滅スルニ在ルヲ銘肝シ、敵撃滅ノ一途ニ邁進スルヲ要ス。戦友ノ看護、付添ハ之ヲ認メズ。戦闘間、衛生部員ハ第一線ニ進出シテ治療ニ任ズベシ。
第十二 戦闘中ノ部隊ノ後退ハ之ヲ許サズ。斥候、伝令、挺進攻撃部隊ノ目的達成後ノ原隊復帰ノミ後方ニ向フ行進ヲ許ス。
(神坂純「サイパン日記」〈五〉)

必要があって、昭和二十年四月二十日付公布の「国土決戦教令」を参照したいと思ったんだけどヤフーの検索などではなかなか原文に辿り着けない。ふと思いついて国立国会図書館のデジタルコレクションを覗いてみたら(利用者登録してあるんです…)、見事にヒットしましたね。デジタルにも良いところはある。添付した画像は神坂純(上澤祥昭)さんが描いたサイパン地図。手描きゆえ、縦横が上手く決まらず往生した。

 
▼ 「人間像」第133号 後半   引用
  あらや   ..2025/05/08(木) 16:43  No.1187
  本日、「人間像」第133号(170ページ)作業、終了です。作業時間は「71時間/延べ日数19日間」でした。収録タイトル数は、三月に行った「月刊おたる」調査の採集分を含みますので一気に「2561作品」になっています。裏表紙は前号と同じ『老春』なので省略。

 今年度四冊目「冬季号」と言った所だが、内容は「春爛漫」(?) メンバーも多彩になった。葛西は何十年ぶりの復帰第一作、このハードルを越えれば第二、第三作はスムーズに行くに違いない。村上の長篇が連載三回目となった。エッセイ欄もナンバーを重ね順調に継続されそうで編集の形態が整ったようである。
(「人間像」第133号/編集後記)

なによりも針山作品が毎号読めることが嬉しい。

☆しかし、嬉しいニュースばかりでもない。佐藤瑜璃が骨折で長い間入院してやっと退院したと思ったら、今度は針田が肝臓で入院治療と言うことになった。かなり長い闘病生活になりそうだ。じっとベッドに臥していると、書きたいことが欝積してくるだろうから、病いを福となして書いて欲しいものである。
(「人間像」第133号/編集雑記)

第134号へ急ぎます。



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