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火照りの残った石の台に横たわっている彼の骨をひろう。 「もう痛くないよねー」 奥様と二女の美和子さんが肩を寄せ合い哀しみにむせびながら、腰部の骨を拾い壺にかさばる骨を、係の者が先の丸い棒でさくさくと砕いていく。強い炎で焼かれても頑丈さをみせ、大きな骨片として残っているべきなのだが、それは変色しくだけていた。ガン細胞が骨を砕いた痕跡なのか。 ガンよ驕るなかれ。勝ったのではない。彼と相打ちなのだ。 (村上英治「友よ、さらば」)
第141号作業、始まりました。夏の物事の片付け、冬への準備をやりながらの毎日です。この第141号の発行は平成7年(1995年)の6月20日。ということは1月の阪神淡路大震災、3月のオウム真理教などを経験した社会を背景に持ってます。(個人的には、1995年は「Windows95」が発売された年として記憶されます。あそこからここまで一気呵成だったような気がする…) 後半の作品は、土肥純光『さまざまな足音』、佐々木徳次『いくつかの最後』、内田保夫『墨染に舞う』、丸本明子『花茣蓙』、北野広『あーまたこの二月の月が』、日高良子『八百字のロマン』と続きます。
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