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「おい、パン屋の息子」 ぼくは小窓を少し開けて声をかけた。 「あッ」 びっくりしてパン屋の息子は鳥篭を落としそうになったが、案外平気な顔でふり返り、どこで声がしたのか分からずきょろきょろとあたりを見回している。 「お前の頭の上だ。ここだ、ここだ」 小窓のガラスをこつこつと叩いて合図すると、やっと気がついてこっちを見上げた。 「ああ、そこでしたか」 パン屋のせがれは健康そのものの日焼けした顔にまっ白な歯を見せてこちらを見上げた。半分は警戒心のまざったさぐるような笑顔で、 「モガキさん、ですね……」 (朽木寒三「リリウ・エ」)
第150号作業、スタートです。全体は三部構成になっていて、第一部がレギュラーの小説作品。第二部で「創刊50年特集」。第三部でエッセイ・連載ものなどといった造りになっています。久しぶりの296ページ。今、そのトップバッターの朽木寒三『リリウ・エ』を人間像ライブラリーにアップしたところです。小説作品は『リリウ・エ』に続いて、日高良子『女のふるさと』、千田三四郎『まなざし』、丸本明子『七曲り』、内田保夫『花語らず』、矢塚鷹夫『蜘蛛の糸』、北野広『十二月二十三日』となっています。さて、それでは、原稿用紙150枚の大作『女のふるさと』へ。
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