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No.348 への▼返信フォームです。


▼ 内地へよろしく   引用
  あらや   ..2015/10/22(木) 18:33  No.348
  「てッ、泣くどころか、笑ったてや……なあ、光枝ッ、みんなで笑っただなア、おらどもみてえな蟹糞を、一発千円の弾丸で射つだば、そっちが大損しべえって笑ったい」
「それから、どうした」
「射つか射つかと待っていると、艦の天蓋がぬうッとあいて、日本の海軍士官が出て来て、おいこら、その監視船ッ、さっき燈火が見えたぞ。お前らの監視はなっちょらん。しっかりせえッ、って怒鳴っただあ」
「やあ」
「今三郎め、びっくりしやがって、いきなり甲板へ土下座するつうと、へい、へい、へいとつづけざまに二十遍もお辞儀しただい……なあ、光枝」
光枝という娘が、おしゃまな顔つきで、うむ、とうなずいて、
「するつうと、士官が笑って、そんなに謝らんでもよい。叱ったのではない。注意しただけだ。お前たちもご苦労だが、一層、注意してやってくれ、つうて、それから、おらたちを見て、おや、小ッちゃな女の子が大勢いるが、お前たちはいったい何か、つうから、おらたちは、毎日、五十伝馬で監視船へ飯を運んでいるのだとそういうつうと、ちょっと待て、といって引込んで行ったと思うと、またすぐ出てきて、その伝馬でみんなこっちへ来い、つうだよ」
「そいで、みんなが、行こう行こうつうて、潜水艦へ伝馬を着けると、水兵さんが沢山出てきた。それから艇長というひとが来て、お前たちは偉いもんだぞ、といって一人ずつ頭を撫でて、そして、キャラメルを一箱ずつくれた」
 ちびッ子はそういうと、大切そうに手で懐中をおさえた。治郎作親方は、ちょっと待て、といって渋い顔をし、
「お前たちは、物の足らない潜水艦へ行って、キャラメルなんぞ貰って来たのか、この馬鹿娘ども」
 と、大きな眼を剥いた。
(久生十蘭「内地へよろしく」)

久生十蘭もストーンズ・タイプかな。読んでる最中はどんどんドライブがかかって、楽しい。でも、いつかラストが来るんだよね。




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