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No.361 への▼返信フォームです。


▼ ボボロン雑記   引用
  あらや   ..2016/02/15(月) 19:11  No.361
   Aさんはぼくの前任地でもあった京極町の郵便局に永年勤め、退職後札幌に移り住んだ一家で、夫人が妻と書道仲間という間柄である。そんなわけでぼくとAさんには共通の話題もないものだから、京極時代の思い出話などして間をもたせていたが、思いがけなく共通の話題がAさんのほうから出た。
「先生とおなじように小説を書いていた大森先生という人がいたと思うんですが、知りませんか?」
「ああ、知っています。知ってるといっても直接会ったことはありませんが、むかし鈴川の中学校に勤めていたことがあると聞いています」
「私は余市時代に習ったんですが、若いときから小説を書いていたそうで、その後どうしたかと思って……」
「もう、かなり昔になりますけど、何度か芥川賞の候補になって作家生活に入ったようです」
「じゃあ小説家になられたんですね」
「そうですね。何冊か本もだされていたし、文芸雑誌にも発表しておりましたから」
「いまも書いているんですか」
「さあ、最近はあまり見かけませんね。実はその先生には弟さんがおられて、その人も一時期小説を書いていてぼくらの雑誌に入ったこともあるんですけれど、その弟さんの話ですと、兄さんは今は別のペンネームで書いているそうです」
 ここでいう大森先生とは大森光章こと大森倖二氏であり、弟さんとは今出力弥こと大森亮三氏のことである。ぼくもそれ以上のことは知らなかったので、この話題も長くは続かなかった。
(針山和美「ボボロン雑記」)

へえー。意外な所で、意外な人とつながっちゃった。

道立図書館から借りた針山作品、先ほど読み終えた「ボボロン雑記」で全冊読了です。慌ただしかった(昔の人はいっぱい書くので、読むのに時間がかかる…)けれど、無事返却日の二日前に読了できてよかった。道立は全作品を所蔵していたので、処女出版の「奇妙な旅行」から最後の「ボボロン雑記」まで年代を追って読めたのが大変ありがたがった。


 
▼ 道立図書館所蔵(図書)   引用
  あらや   ..2016/02/15(月) 19:13  No.362
  【図書】奇妙な旅行 針山和巳/著 人間像同人会/共和村(北海道岩内郡) 1970
内容:奇妙な旅行.三郎の手紙.ほか
【図書】百姓二代 針山和美/著 人間像同人会 1988.11
内容:百姓二代.傾斜.山中にて.嫁こいらんかね.
【図書】愛と逃亡 針山和美/著 人間像同人会 1989.11
内容:愛と逃亡.支笏湖.女囚の記.
【図書】天皇の黄昏 針山和美/著 人間像同人会 1991.2
内容:天皇の黄昏.春の狂い.再会.古い傷跡.ひみつ.俺の葬式.春の淡雪.
【図書】老春 針山和美/著 人間像出版 1992.4
内容:シマ婆さん.洋三の黄昏.老春.まぼろしのビル.黄昏の同級会.四月馬鹿日記.
【図書】北からの風 針山和美/著 人間像出版 1993.2
内容:北からの風.山の秋.RVの老人.浅き夢みし.バブル老人.K老人の話.
【図書】白の点景 針山和美/著 晃文社(札幌) 1997.4
内容:オートバイの女.はじけた光.湖畔の一夜.山あいの部落で.夫の裁判.白の点景.
【エッセイ】わが幼少記 針山和美/著 晃文社(札幌) 1997.5
【エッセイ】ボボロン雑記 針山和美/著 晃文社(札幌) 2000.9

 
▼ 読書感想文   引用
  あらや   ..2016/02/15(月) 19:15  No.363
  単行本になったものを追って行くと、1970年の「奇妙な旅行」が飛び抜けて古い。妹さんが当時廉価で出まわりはじめたタイプ印刷で原稿を打ってくれたものだそうで、造本も荒い。時代を感じさせます。
二作目の「百姓二代」の出版が1988年と間が空きますが、ちょうどこの時期に「京極文芸」の発行に関わっていた1973〜1983年(京極小学校教員時代)が嵌まるわけです。同人雑誌「人間像」と「京極文芸」の二刀流時代ですね。
「三郎の手紙」のように、すでに原稿があったものを「京極文芸」に転載したり、「京極文芸」では「敵機墜落事件」として発表した作品を、「百姓二代」では「山中にて」という結末が百八十度ちがう作品に仕上げたり、自由自在です。すごいテクニシャン。
バイオレンス…と言っていいんだろうな。現代の佐々木譲の遙か昔に、「百姓二代」とか「愛と逃亡」のような作品を書いていた人がいたなんて、なにか夢みたいだ。片方で、小学校の先生やっていたっていうんだから腰抜かしてしまいます。

 
▼ 道立図書館所蔵(雑誌)   引用
  あらや   ..2016/02/15(月) 19:18  No.364
  【雑誌】人間像 所蔵巻号:19号〜185号
人間像同人会/喜茂別(後志) 出版年:1950〜 刊行頻度:年3回刊(120)
出版地変更:喜茂別村→余市町→倶知安町→札幌→北広島(2003.11)
発行所変更:札幌市手稲区新発寒5-7-5針山和美方→福島昭午(2003.11)

道立図書館の所蔵は19号からだそうで… 最初の頃の「人間像」はガリ版刷りだったと何かに書いていたから、そんな事情があるのかもしれない。今の製本教室のドタバタが落ち着いたら、道立に直行したいと思います。2005年12月発行の174号が「千田三四郎追悼」号(千田三四郎も同人だったんだ!)だったりして、なんとも気がはやります。ちなみに、道立は

【雑誌】京極文芸 所蔵巻号:創刊号〜15号。
京極文芸クラブ/京極町(後志) 出版年:1973〜1983 刊行頻度:不定期刊(0)

もちろん「京極文芸」、所蔵でした。

 
▼ ふたたび「ボボロン」   引用
  あらや   ..2016/02/15(月) 19:21  No.365
   若い頃、あの事故で有名になった「豊浜トンネル」の近くに住んだことがある。今にも崩れそうな切り立った断崖の下を歩くときは、何か圧倒的な恐怖感が伴ったものだった。現に道路のあちこちに崩れ落ちた小さな岩石が転がっていて、つねに頭の上に気を遺いながら歩いたものである。しかし岩をくり貫いただけの旧トンネルを教え子たちと歩く時には、そんな心配をしたことはなかった。数十年を経た手造りのトンネルは裸の岩石がそのまま岩肌を見せていたが、何か永遠に崩れ落ちることなどないような安心感を与えた。頭上まで岩石で覆われた窪みのような場所で泳いだりもしたが、そんなときでさえ岩が崩れる心配をしたことなどなかった。
 ところが同じ地続きの新トンネルであのような大事故が起きたのである。人が手を掛けなければあの岩も更に数百年、あるいは数千年崩れることはなかったかも知れない。そう考えると人間が手を加え、工事を施すということは、自然に逆らい自然の怒りを触発することのようにも思える。それ故に手を加える以上、元の自然よりも更に安定した状態にしなければならないのではなかろうか。
(針山和美「ボボロン雑記」)

ちょうど今年の二月が、あの「豊浜トンネル事故」から二十年でした。犠牲者の冥福を深くお祈りします。北海道新聞の小樽後志欄でとりあげられたので、余市の豊浜小学校や共和の学田小学校の教え子たちからも問い合わせがあり、歴任したそれぞれの小学校での仕事にもふれることができました。いろいろな意味で、たいへん興味深い人です。



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