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No.442 への▼返信フォームです。


▼ 隠蔽捜査   引用
  あらや   ..2018/03/22(木) 09:52  No.442
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「美紀と話をしてくださいね」
「子供のことはおまえに任せてある」
「結婚の話ですよ。しかもお相手は、あなたの元上司の息子さんだし……」
「良縁だ。何の問題もない」
「美紀は迷っているようですよ。なにせ、まだ若いですし……」
竜崎は、新聞をめくり必要な情報を頭に叩き込もうとしていた。
「わかった」
また生返事をする。
  (中略)
五紙全部に目を通し終えたとき、息子の邦彦が寝間着代わりにしているトレーナー姿で現れた。
「朝ご飯は?」
妻が邦彦に尋ねる。
「コーヒーだけくれよ」
竜崎は新聞をたたんでテーブルの端に置いた。
「予備校はちゃんと行ってるんだろうな?」
尋ねると邦彦は、眼を合わさぬままこたえた。
「ああ。だからこんなに早起きしてるんじゃないか」
(今野敏「隠蔽捜査」)

ふーん、うちの家族構成と同じだ…


 
▼ 果断   引用
  あらや   ..2018/03/22(木) 09:56  No.443
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「お母さん、だいじょうぶ? 顔色が悪いわよ」
竜崎はその言葉に驚いて、妻の顔を見た。たしかに、いつもより顔色が悪い。朝起きてからずいぶんと時間が経っているが、まったく気づかなかった。
「ちょっと、胃の具合がね……」
「無理しないで、寝てなさい」
竜崎が言った。
「あたしが寝てたら、あなた朝ご飯を食べられないでしょう?」
「もう朝食の用意はできている。だから、寝ていいと言ってるんだ」
「ちょっと、お父さん、その言い方ってないでしょう?」
美紀が竜崎を睨んだ。竜崎はぽかんと娘を見返した。
「なぜだ?」
「朝食の用意が済んだらもう用はないから寝ろってこと?」
「料理を始める前に母さんの不調に気づいたら、別の対処法があったかもしれないが、実際にもう朝食のしたくは終わっているんだ」
「どうしてもっと早く気づかなかったのよ」
「新聞を読んでいた」
(今野敏「果断 隠蔽捜査2」)

家族の朝食風景から始まる書き出しはいいね。『隠蔽捜査』が2005年、『2』が2007年の出版。美紀の就活が描かれるのには理由があると思う。

 
▼ 就職氷河期   引用
  あらや   ..2018/03/22(木) 10:03  No.444
  就職氷河期の一時終結と既卒者の就職状況
2000年代半ばの輸出産業の好転で、雇用環境は回復し、2005年には就職氷河期は一旦終結した。新卒者の求人倍率は上昇し、2006年から2008年の3年間は一転、売り手市場と呼ばれるようになり、有効求人倍率は2006年から2007年にかけて 1 を上回った。13年近くにわたる採用抑制の影響により、多くの企業で人手不足となっており、労働環境が苛酷になるブラック企業が増加した。
(ウィキペディア)

就職氷河期は脱したみたいだが、この不景気の十年間が若い人たち(特に中・高生)に与えた傷は相当に深いものではないかと考えています。人生観や世界観がかなり変わった世代が生まれた。で、現場は、たぶんあそこだった…と。この感覚は現在まで続いていて、湧学館にいた時なんかはひしひしとそれを感じていました。後遺症みたいな。

『隠蔽捜査』、面白いですね。(今ごろ…)

 
▼ 疑心   引用
  あらや   ..2018/03/22(木) 10:15  No.445
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「何だ、あれは……」
竜崎はつぶやいていた。妻の冴子の声が台所から聞こえてきた。
「あなた、高校生とかの頃に、好きだったアイドルはいなかったんですか?」
言われて考えてみた。
「記憶にないな」
「きっと、邦彦は、その山咲真美ってアイドルに夢中なんですよ」
「受験勉強の最中だろう。東大受験は甘くないぞ。一心不乱に勉強するくらいの覚悟がなければ……」
「それとこれとは、別問題ですよ。若い子は誰だって自分だけのアイドルがいるものです。疑似恋愛みたいなものですかね……。そこからやがて本当の恋愛に移行していくんです」
「疑似恋愛……。それ自体が無意味だと思うが……」
「意味があるとかないとかじゃないんです。好きになるのはどうしようもないんです」
「そういうものなのか..」
「まったく、こんな唐変木、見たことない」
唐変木などという言い方は、今時死語だろうと思った。
(今野敏「疑心 隠蔽捜査3」)

『疑心』の出版は2009年3月。初出は、「小説新潮」の平成20年(2008年)の6月号〜10月号です。この日付は大事かもしれませんね。というのは、

2008年9月15日。今から思えば、この日が世界経済の「転機」になった。この日、米国の誇る大手投資銀行であるリーマン・ブラザーズは、連邦破産法11条を申請し、破綻した。
(真壁昭夫「2009年世界経済が「100年に一度の危機」を乗り越えるために」)

リーマン・ショック直前の、竜崎家ではありました。



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