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No.850 への▼返信フォームです。


▼ 「人間像」第92号   引用
  あらや   ..2021/08/10(火) 18:47  No.850
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8月4日より第92号作業に入りました。現在、同人他の〈追悼文〉部分を終え、古宇伸太郎〈作品特集〉に入ったところです。『漂流(第7回/最終回)』に相当する部分を今進行中ですが、これ以外の作品はすでに作業を終えていますので、300ページを越える第92号てすが仕上がりはいつもより早いと思います。

また歯を抜いたので、今日は少し鈍痛だった。


 
▼ 漂流   引用
  あらや   ..2021/08/13(金) 16:26  No.851
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 火をつけた。紫の濃い煙が光りの中で渦を巻き、縞もようを描き、一瞬、馬や犬や人の顔の形をつくって、消えた。何となく〈煙っていいなあ〉と思った。煙は、どんどん空へ昇っていってしまいには、雲にのりまたがって世界中を駆けまわれる。ひょっとすると、太陽や月や星の国々にさえ行けるのかも知れない。米の値段や貯金帖のことを心配しなくてもいいし、何より、簿記だとか算術などで顔をしかめなくてもいい。
 炭火が赤々と燃えパチパチはねる。煙が終ってこまかい白い灰が火気にのって飛びあがっては、落ちる。
 切り炉へ火を移しているうちにふと、窓のないあの部屋をもう一度はっきり見ておこうと思いついた。私の創りあげた立派な少年の住む部屋だ。

古宇伸太郎『漂流』のラストを書き写していて涙が出た。「私の創りあげた立派な少年の住む部屋だ」という最後の一行が小説家・古宇伸太郎の人生を見事に暗示しているように感じました。
第92号に『漂流』第七回というものはありません。追悼号ということで、『漂流』は第一章から最後の第百四章まで全て起こし、更に息子・福島昭午氏の「註」が付けられています。追悼号ですから、これはこれで人間像同人会のとる態度として正しいのかもしれませんが、私には、「私の創りあげた立派な少年の住む部屋だ」で止めた方が余韻が残ります。そこで、「註」の入らない『漂流』第七回を独自に作らせてもらいました。
お盆の入りの日に『漂流』が間に合ったこともなにかの縁でしょうか。福島さんの初盆に。

 
▼ おらが栖   引用
  あらや   ..2021/08/18(水) 17:51  No.852
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『漂流』を完了した時点で、もうこれ以降の作品はすでに作業済みのものばかりなので過去のファイルをコピペして、はい第92号終了と思っていたのですが…
『おらが栖』をいじり始めたらすぐに気づいた。書き換えられている! なんという執念なのだろう。そして、さらに驚いたのが、

――丸帯はさておいて問題は、奥さんに誤解され通したことです。A子の訴えだけを聞かれたのですから、妻の座から共感なさるのはごもっともです。しかし、妻子を棄てて若い女と駆けおちした、などというお考えだけは御勘弁ください。今は全智の世界におすまいですから、何も彼もお見とおしでしょうが、念のためいま私の口からじかにお聞きとり下さい。

第70号発表時の『おらが栖』は単に銭函版「ぼくのアウトドアライフ」といった作品だったのですが、ここに新たに、古宇伸太郎―福島昭午父子の確執の原点「離婚」の記述が入って来ると『おらが栖』は全く違った様相の作品になってしまいます。

福島氏が『父・福島豊』の中で、「父の書いたものはストイックではなかったように思う。いわば弁解じみたものにならざるを得ない性質のものである。私はそれがあまり好きではなかった」と言っていたのはこれかと思いました。福島氏はまだ許さなかった。その強烈な文学観が、古宇氏をして『漂流』の世界に踏み込ませたのでしょう。

 
▼ 子烏   引用
  あらや   ..2021/08/21(土) 10:01  No.853
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 妻に対して疑惑を抱いたのは、十一月も末の朝のことである。小学校四年生の長男から、母親の留守を悲しむ手紙が届いた。――度たびの隣村ゆきに妹も弟もひどく淋しがっているし、今度は十日も戻らない、と訴えて、また、母の許しなく父へ手紙を書くことを禁じられているからこの手紙のことは、母に告げないでほしい、そういう内容がたどたどしい鉛筆がきで綴られてあった。不吉な予感で男の心臓がしめつけられた。妻の従弟の赤い歯ぐきの色が不潔な色でうかんできた。一度は、まさかと否定したものの、父ヘの手紙を禁じられている、という追い書が、否みがたい力をもって、迫ってくる。

書き換えられていたのは『おらが栖』と『子烏』でした。『馬頭観音』を改稿した『旧街道点景』に書き換えの手が入っていないのは、舞台が東京時代であり、〈離婚〉の経緯に直接かかわる事柄ではないからだと考えます。古宇氏にとっては、『蛾性の女』と同じく昔の作品なのだと思います。ただ、そうであれば、『おらが栖』と『子烏』は人間像同人である古宇伸太郎の〈今〉を、福島氏を始めとする同人たちに語る真剣な作品と云えるでしょう。緊張感は息苦しいほど。

本日、「人間像」第92号作業、完了しました。過去のデジタル化作品をかなり援用しているので参考にはならないかもしれないが、一応、記録として。333ページの「人間像」第92号に対して、作業にかかった時間、「77時間/延べ日数16日間」。収録タイトル数は「1681作品」に。



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