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No.1001 への▼返信フォームです。


▼ 「人間像」第114号 前半   引用
  あらや   ..2023/08/30(水) 17:51  No.1001
  .jpg / 44.2KB

さむがりやの母だったから
厚い坐布団をつくって
置いてきた
電話のむこうの妹の声が
いつ迄もひえびえと
心の底に残っている
(艀参三「納骨」)

 母が死んだ。
 その日は、朝から風が吹き荒れ、海は白い波濤を幾重にもして、遠い水平線にまで展がっていた。岩場に打寄せた波頭がくずれこわれて、さまざまな大きさの波の華をつくり、それが風にのって、あたりに吹きとんでいた。空には黒い雲がたちこめ、昼すぎになると、それは雪にかわった。
(針田和明「波の華」)

 母が、あわただしく、この世から消えてしまった。二年間の闘病生活の間には、元気な時の母と違って、受身になってしまった、病人という弱者の母との思い出が、次から次へと、思い出されて、やりきれなくなる。誰でもが辿る道だが、空しさのみが、去来する。
(我楽多あき「関西模様」)

八月下旬より「人間像」第114号作業を開始しています。現在、千田三四郎『道のり』(約100ページ)一本を残すところまで来ています。しかし、それにしても!、第114号は、あちらでもこちらでも「母が死んだ」の続出で少々気が滅入ります。(『道のり』でもたぶん出てくるし…)
昔、喪中葉書が互いに乱れ飛ぶ形で賀状挨拶をしていた一時期があったけれど、「人間像」同人もそんな時代なのだろうか。


 
▼ 道のり 第一幕   引用
  あらや   ..2023/09/03(日) 16:56  No.1002
  〈月形村は百戸余りの市街なれども、名高い樺戸集治監の官舎が相当あり、三日間の興行中に看守に連れられた囚徒の作業ぶりを〉、連日参考までに見聞してあるいた。それをもとに咲次郎は三年後の山形県巡業中、岩村家に仮託した石村家と囚徒九里嶋常喜をつなぐ因縁劇『軽命』をまとめあげて、以後なんどとなく上演している。明治新派のアクが濃い作品だが、それなりに虚構のおもしろさがただよう。荒筋にやや補正をほどこして紹介してみたい。
(千田三四郎「道のり」/第一幕「勇躍」)

『道のり』は長いので、一幕(章)完了する毎に、ライブラリー上に公開して行こうと考えています。

第一幕の最後で、独立理想団がやっていた芝居の一例をかなり詳細に紹介してくれているのが有難い。(『軽命』、面白いじゃないか!) 乾咲次郎という人間がぐっと鮮明になった。千田さんの仕事は丁寧だな。石川啄木も同じ頃「小樽日報」に芝居評記事を書いているのですが、気どった文章でどんな芝居なのか全然わからん。

 
▼ 道のり 第三幕   引用
  あらや   ..2023/09/07(木) 17:37  No.1003
   二月二十五日の春日座正面には、でかでかと〈独立理想団霧嶋一行初御目見得開演〉の看板が掲げられた。深夜のうちに巌麗道と高木が協力して据えつけたもので、これが第三次旗挙げの宣言だった。
 出し物は咲次郎自作の『軽命』三幕と喜劇『演芸道楽』一幕。庵の俳優名も墨痕あざやかだ。朝、それを眺めた咲次郎は、胸が青年のように高鳴った。たとえ劇場は小さくとも、花の都で開演できるのだ。「よーし、やってのけるぞ」と。
(千田三四郎「道のり」/第三幕「展開」)

おー、ここで『軽命』が来るのか!

八月の異常な暑さにも負けず、『道のり』こつこつと歩んでいます。あと一週間くらいかな…

 
▼ 「人間像」第114号 後半   引用
  あらや   ..2023/09/14(木) 11:59  No.1004
   風の音をあらわす寝鳥の能管=B花道を白狐に先導されて高無竜三がツケの蔭打ち≠ナ登場する。白狐は藪畳に消える。「お尋ねいたします。このあたりに高無秋子という少女が住んでいるときいてきたのですが、心当りないでしょうか」。秋子、小屋からとびだして「あっ兄さんだ、兄さん、帰ってきたのね」と抱きつく。「おお、秋ちゃん。ずいぶん捜したんだよ」 「逢いたかった、逢いたかったのよ、兄さん。……兄さんの留守中にお父さんもお姉さんも」 「え、父上と春子がどうしたって……。屋敷には誰もいなかったが」 「……殺されました」 「殺された、殺されたって……、いったい誰に、誰に殺されたんだ」
(千田三四郎「道のり」/第三幕「展開」/『神使狐』の筋立て)

『軽命』に続いて『神使狐』をかなり詳しく紹介してくれたので、咲次郎たちがやっていた舞台の姿がかなり明瞭になりました。有難い。

長かった『道のり』の作業も完了し、昨日、「人間像」第114号(約150ページ)を人間像ライブラリーにアップしました。作業時間は「96時間/延べ日数19日間」でした。収録タイトル数は「2162作品」になりました。裏表紙は第111号以来変わらないので省略。



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