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〈京橋瀧山町 東京朝日新聞編集室〉 〈記事「無政府黨員の公判」〉 啄木 あっ松崎さん これ…… 七十三条該当ということは…… 天民 ん…… 啄木 死刑か無罪かのどちらかしかない…… 天民 だな しかし無罪はあり得ん…… ひょっとすると政府は二十六名全員を殺すつもりだ 啄木 二十六名全員? ……そんな無茶な (「不機嫌亭漱石」/第十三章「蒼穹無疆」)
驚いたなあ。明治つながりで『「坊っちゃん」の時代』全五巻を読み返したんだけど、松崎天民、出ていたよ。それも、まさに明治が終わらんとしている最終章あたりで、啄木との会話とは! 『イザベラ・バードの日本紀行』に平取アイヌの酋長として出てくる「ペンリ」が「ペンリウク」だったとか、若い時読んだつもりの本に自信が持てなくなってくる今日この頃です。
天民 主筆! 朝からやっています! 主筆 やっている? なにをやっているんだ 松崎君 天民 死刑ですよ 死刑! 主筆 幸徳たちか!? 天民 判決からまだ六日だというのに もう 主筆 ………… 天民 欧米からの反対の声が大きくなる前に 大急ぎで殺しているんです まるで悪事を悟られたくないかのように 啄木 日本は …… 駄目だ (同署/第十五章「明治が終焉する」)
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