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札幌の同人雑誌「コブタン」が第50号で最終号となりました。編集人がお亡くりになられて終刊となる「人間像」のような形しか知らなかったので、「コブタン」第50号のように、主宰の須貝光夫氏はじめ編集に協力していた家族全員のメッセージが載った最終号には意表をつかれました。最終号となると、愛読していた連載・須田茂『近現代アイヌ文学史稿』も最終回です。
一九七〇年代において活発な執筆を続けた才能が再び復活していることは大きな希望であろう。就中『揺らぐ大地』はアイヌ文学としての側面から見れば、筆者の知る限り、上西晴治の『十勝平野』(一九九三年)以来となる「小説」の刊行である。アイヌ文学では自伝や詩歌の分野では多くの作品が見られるものの、本格的な創作は乏しかっただけに、『揺らぐ大地』に収録された四編はアイヌ文学史において大きな意義をもっている。 (第十七章 アイヌ民族による現代詩歌〈一〉/現代詩/土橋芳美)
また教えてもらった。「『十勝平野』以来」と聞かされれば読まずにはいられない。そして読めば、なんで俺はこんな大事な本も知らないでおめおめ生きているんだろうとけっこう落ち込む。それにしてもなんという須田さんの持久力だろう。『揺らぐ大地』も、最後の章で取り上げられている『北海道の児童文学・文化史』も、みんな去年発行の本ですからね。でも、これらをすぐに自家薬籠中の物にして進んで行くところに同人雑誌の一番の意味を感じるのです。
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