| TOP | HOME | 携帯用 |



司書室BBS

 
Name
Mail
URL
Backcolor
Fontcolor
Title  
File  
Cookie Preview      DelKey 

▼ 「人間像」第86号 前半   [RES]
  あらや   ..2021/03/05(金) 12:34  No.814
   「また、来たてばァ」
 顔みしりの漁夫が、津軽の飴鉢とか数珠つなぎの乾栗の束をもって挨拶にくる。その手みやげからは内地の春がぷんぷん匂う。
 やがて漁場ごとに網おろしの祝宴が張られ、建網の親船が沖合に点々と浮ぶ。急に鴎の数がふえた、と思う間もなく「走り」が網にのる。時化あとには、どっと厚群来だ。紺碧の海面はみるみる鰊の精液で白濁する。その瞬間から荒磯は昼夜の別なく殺気だち、市街地は火の消えたように静まりかえる。
(古宇伸太郎「漂流」)

本日、「人間像」第86号巻頭の古宇伸太郎『漂流(第一回)』をライブラリーにアップしました。前スレッドで「山麓文学の誕生」を云いましたが、ここに来て、古宇氏の書きっぷりに、なにか私は「岩宇文学の誕生」といったものをも思わせます。金沢欣哉氏以来絶えて久しかった〈岩宇〉(←「がんう」と読みます)の潮風が押し寄せて来ます。大変気持ちが良い。


 
▼ 解放以前  
  あらや   ..2021/03/15(月) 10:02  No.815
  本日、瀬田栄之助『解放以前』をライブラリーにアップしました。いやー、感動した。(変な表現だが)背筋が凍る思いがする。

ワープロ作業だけでも四、五日かかっているのだが、更にルビ・傍点のテキスト処理に半日くらいの時間がかかりました。また、このカットは、いつものタイトル脇に添えられるおざなりカットとは違い、『解放以前』という作品の中にきちんと配置されているものなので、おそらくは作者の指定による『解放以前』の一部分と考えライブラリーにもアップしています。

第88号が「瀬田栄之助追悼号」なのですが、その号と同時に、『いのちある日に』(講談社,1970.11)の中から『死の環』『犠牲者たち』のアップも考えています。できる限り、瀬田作品の網羅をライブラリー上で実現したい。

では、津田さち子『大和ばかの記』へ。あと、一週間くらいか…

 
▼ 「人間像」第86号 後半  
  あらや   ..2021/03/20(土) 06:44  No.816
  「人間像」第86号を本日アップしました。作業にかかった時間は「119時間/延べ日数19日間」でした。収録タイトル数は「1550作品」に。
古宇伸太郎、瀬田栄之助、100枚越え作品の揃い踏み150ページですから、なかなか時間かかりました。

冬が終わったみたいですね。道路の雪はなくなって歩くのが楽になりました。先日、通院のついでに街へ出て、図書館で「人間像」関係の資料を仕入れてきました。この三月下旬でそれらを整理して、第87号作業は四月からになるでしょうか。外国人観光客がいないので、三十年前の懐かしい小樽の街が出現しています。


▼ 「人間像」第85号 前半   [RES]
  あらや   ..2021/02/21(日) 14:58  No.810
  2月20日より「人間像」第85号作業を始めました。第85号もほぼ瀬田栄之助特集状態です。本日、巻頭小説『禿鷹のように』をアップ。続いて、『病室にて』を明後日にもアップの予定です。

 ……ぼくは、いま、君のためにスペイン語について語ろうと思う。おそらく、この冬のあいだ、あるいは夏のあいだ、酷寒に堪え、玉の汗を流し、営々辛苦、勉学のための資本(もとで)を得んがためにアルバイトをして、この小著を求めてくれたにちがいない君のために、「ぼくにとってスペイン語とは、いったい、なんだったのか?」というテーマについて真心から君にだけ、そっとつたえたい――

『スペイン文化とスペイン語の研究』、買ってしまいました。引用したのは、そのレッスン1冒頭です。面白そう。パソコン作業をやりながら、疲れたら休憩時間に読み進めよう。針山氏の紹介文が無かったら、ただのスペイン語教習本だと思って見向きもしなかったでしょうね。感謝です。


 
▼ 奇妙な旅行  
  あらや   ..2021/02/22(月) 11:29  No.811
  第85号の表紙裏は一ページ大のスペースをとって針山和美氏の処女創作集『奇妙な旅行』の広告が出ています。それを見ると、おお!針山氏も遂に単行本に進出か…といった感慨に打たれます。が、実際にその『奇妙な旅行』を手にしている(人間像ライブラリーにもすでにアップ済み)現在の私たちの感覚では、朽木氏の『馬賊戦記』や平木氏の『空気の階段を登れ』が持っていた雰囲気とはずいぶん異質なものに思えるのです。私には、初めて『奇妙な旅行』の広告が出た第84号のこの方が、なにか針山氏の選び取ったスタンスをうまく表現しているような気がしています。第85号広告は少し東京っぽい。

先ほど瀬田栄之助『病室にて』をアップしました。これから蛭子可於巣(=千田三四郎)『急使になった日』に向かいます。

 
▼ 急使になった日  
  あらや   ..2021/02/23(火) 09:55  No.812
  蛭子可於巣『急使になった日』、今朝アップしました。第85号の発行日は昭和45年(1970年)6月20日です。よど号ハイジャックの1970年に、終戦の玉音放送を岩見沢駅で聞く…なんて小説を書いている人間がいるということに驚く人もいるかもしれませんね。でも、冷静に考えてみれば、1970年、高校三年生だった私の周りには日露戦争を戦った爺さんも健在だったし、樺太引揚者の叔父さん一家も隣町に健在だった。そんなに不思議なことではありません。

■ 数年前、埼玉県新座町に新居を建てたばかりの上沢祥昭であったが、子供達の成長とともにせまぐるしくなったのと、今までの目前にあった秩父の連山や田園風景が団地ビルのために見えなくなったのを理由に、足立町の方に新家を建設中である。
 安く買った土地が坪十万円にも売れたので団地サマサマだと喜んでいるが、新居に入ればまた一段と創作活動の方もまた活溌になるはずである。そんなことで長篇はいま一頓挫であるらしい。
(「人間像」第85号/消息)

私にはこちらの方が吃驚でした。いやー、「足立町」ですか。足立町はこの年の十月「志木市」となって独立。四年後には県立志木高校が出来るんですからね。絶対、町のどこかですれちがってる。

 
▼ 「人間像」第85号 後半  
  あらや   ..2021/02/26(金) 17:02  No.813
  本日、「人間像」第85号をアップ。作業にかかった時間、「36時間/延べ日数8日間」です。収録タイトル数は「1541作品」になりました。

瀬田 「事情よく分りました。それではぼくに対する加害者はあなた、八橋一郎ではなく『関西文学』ということになるなァ」
八橋 「そうですね。ぼくもまた被害者です」
瀬田 「なんとかしたいな。黙っていることはどうにも堪え難いんだ。倣岸非礼きわまるね。詐欺師的要素が『関西文学』にはあるね。同人誌仲間のエチケットも何もないね」
八橋 「問題は、もはや、プライベイトなものじゃありませんね」
(瀬田栄之助・八橋一郎対談「同人誌・体制・批判」)

闘病生活だけでも大変なのに、こんなトラブルまで降りかかって来るなんて! 『まだ生きている日記』を読んで吃驚してしまいました。一時は大阪まで行って『はだしの時代』のコピーをとって来ようとまで考えた「関西文学」だけれど、気持ちが萎えた。私は門脇氏や佐々木氏が書いていた同人雑誌とばかり思い込んでいたのですが、あれは「関西文芸」でした。無駄な時間を使うところだった。では、気を取り直して第86号へ。


▼ 「人間像」第84号 前半   [RES]
  あらや   ..2021/02/06(土) 18:40  No.804
  「人間像」第84号作業、始まっています。第84号は〈癌との斗い〉瀬田栄之助特集。本日、巻頭の『ガンとアポロの日記』、『病床孤読の日記』、『負け犬の日記』の三篇をライブラリーにアップしました。以降、『日没を前に』、『狐憑き』の小説二篇が続きます。

この号は針山家では欠号になっていて、北海道立文学館の方からコピーを頂き、それをベースに作業を行っています。何故針山家に無いのか? それはおそらく瀬田氏の生涯唯一の創作集『いのちある日に』(講談社,1970.11)編集のために針山家から供出されたのではないかと考えます。

『負け犬の日記』が終わったところで半ページ分のスペースができたのでしょう。そこに針山氏(だと思う)が『校正だより』という文章を書いています。これも、ある意味、瀬田栄之助特集の一環と言えなくもない内容なので以下に全文掲載してみます。


 
▼ 校正だより  
  あらや   ..2021/02/06(土) 18:45  No.805
   『人間像』は誤植の多いので有名だった一時期がある。今は幾らかましになったと思うのだが、まだ完全とは云いがたい。誤植の原因は原稿が判りにくい、文選が悪い、校正が不充分などであるが、いずれにしても校正の段階で完全を期さねばならないだろう。ところが、印刷所が遠いために何回も校正ができないのである。結局現在は印刷所で初校をして貰い、編集部がそのあと一回校正するだけで印刷に廻しているが、これではやはり不充分であるらしい。
 ところで、本号の瀬田、古宇のように、ルビが多かったり、古い漢字を使う人の原稿は文選も校正も非常に苦労する。そしてまた、そうした人に限って誤植を気にするようだ。今回も瀬田の原稿の表紙に、
「難しい表現や字句が多いですが、どうか、正確に印刷して下さい。御願いします。
   印刷所御中」
 と注意がきがしてあった。すると、その横に赤いボールペンで、
「著者のいう通り一生懸命やろうぜ。正確に文選するよう! 『ガン患者が……』と思うと感激す」 1/10 I・M
 と記されてあった。この雑誌は遠くはなれたA刑務所で印刷しているのだが、そこの囚人が記したのかも知れない。何かそこに通いあうジーンとした血のようなものを感じた。

 
▼ 日没を前に/狐憑き  
  あらや   ..2021/02/09(火) 17:11  No.806
   胃ガンと診断されたわが身であってみれば、それはもう地獄の屠殺場に撃がれたも同然であって、…

うーん、「著者のいう通り一生懸命やろうぜ」という気持ちは美しいが、冒頭一行目からの誤植はいただけない。いつもは「撃がれた」の送り仮名と漢字の形からの類推で「ああ、〈繋がれた〉ね」となるのだが、今回は、プロの出版社の校正本があるので正確度が増しました。(でも、講談社『いのちある日に』にも誤植はあったよ…)

というわけで、本日、『日没を前に』、『狐憑き』の二篇をライブラリーにアップしました。これから古宇伸太郎『暗礁』にかかります。この『暗礁』、「西えぞ地の穂足内村は石狩湾の南岸にあった」という書き出しで始まる小樽話なんですね。楽しめそう。なにか「穂足内騒動」に題材をとった作品みたいです。ヤフーの検索で「穂足内」を打ってみたら、昔のスワン社HP「おたるの青空」にアップしていた橋本尭尚の『穂足内騒動顛末記』が出て来て吃驚でした。クラウドにはまだ残っているのだろうか?

 
▼ 暗礁  
  あらや   ..2021/02/14(日) 09:48  No.807
  福島の地震報道をラジオで聴き続けた今朝、古宇伸太郎『暗礁』をアップしました。さすが原稿用紙150枚だけあって、五日間くらいの時間がかかりましたね。(カーリング観ていたせいもあるけれど…)
久しぶりに再会した橋本尭尚『穂足内騒動顛末記』にもけっこう見入ってしまって、第84号作業が終わったら、こちらもライブラリーに入れてみようかとも思ったんだけど、『暗礁』の完成度のあまりの高さに、『顛末記』の屋上屋は必要ないかと判断したのでした。
タイミングが良いというか、今朝の新聞には、こんなニュースも載っています。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/511148
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/511221

 
▼ 「人間像」第84号 後半  
  あらや   ..2021/02/17(水) 18:12  No.808
  本日、「人間像」第84号をアップしました。作業にかかった時間は「67時間/延べ日数14日間」です。収録タイトル数は「1528作品」。

●本号は「瀬田栄之助特集号」とした。長い間、胃潰瘍を病んでいたが、それは次第に胃ガンに進んでいた。この経過は、彼自身数年に亘って書いて来た「日記」の中に生々しい。去年の五月、胃ガンの手術をすることになったと伝えて来た時には、「追悼号」を準備しなければならないかと思ったが幸い手術は成功し、五○パーセン卜の生存率を得た。「生きたいならば書くのは止めろ」という医師の言葉を、初めの数週間は守っていたが、「書けないぐらいなら死んだ方がマシ」というところに彼の本領がある。まだ定かではない「いのち」と斗い、おびえながら、書き続けたエッセイ三篇と小説二篇をまとめて、「特集」と銘打ったゆえんである。また彼は天理大学スペイン語科の主任教授の重責にある。その専門分野の仕事として裏表紙広告のような、「現代スペインとスペイン語の研究」なる大著を執筆して来たが、その校正も病床で進めなければならなかった。併せて御高読いただきたい。
●もう一つは、古宇伸太郎の「暗礁」である。長い間、胸中にあたためていた題材であり、その一部は『ろんだん』に連載されたが、ここにまとめて、その成果を問うことにした。御高評いただきたい。
(「人間像」第84号/編集後記)

文学館、裏表紙のコピー作ってくれなかったので、第85号の裏表紙画像で間に合わせました。『現代スペインとスペイン語の研究』の広告、多分これでいいと思いますが、後日道立図書館で確認しておきます。今はコロナで身動きとれない。

 
▼ 現代スペインとスペイン語の研究  
  あらや   ..2021/02/18(木) 17:20  No.809
  上の裏表紙画像、掲示板搭載の関係で文字部分がつぶれて読みにくいと思います。何が書かれているかというと、針山和己(←ママ)氏がこの本の紹介をしています。

 人間像同人による近刊予告 〈一九七一年一月刊行予定〉
 現代スペインとスペイン語の研究
 瀬田栄之助著 大盛堂刊 A5判 一五〇〇円

 本書は、瀬田が昨年病躯を押して執筆した文字通りのライフワークである。本書は従来の無味乾燥な参考書と異り、一人の貧しいアルバイト学生に死期の迫まった教師が彼の持つスペイン語とスペインに対する全ての知識を語り伝えるといった真に独則的な手法が用いられている。瀬田は、大阪外語大と天理大でスペイン文化史と文学史の講座を持つだけあって、本書を埋めるスペインの歴史・美術・文学等々に関する多数の該博な論文は、われら門外漢にあっても大いに興味をそそられるところである。
 目下、再校の段階である。本書の発刊と瀬田の速やかなる快癒を友人の一人として待望するものである。 (針山和己)


▼ 愛と逃亡   [RES]
  あらや   ..2021/01/29(金) 18:05  No.802
  単行本『愛と逃亡』の復刻作業、順調に進んでいます。昨日、『愛と逃亡』を終了し、今日から残りの二篇『支笏湖』『女囚の記』に入ったところです。アップまであと数日か。今回は三篇まとめてのアップになります。

『愛と逃亡』、よかった! 針山氏の最高傑作ではないか。(というのはちょっと言い過ぎか… 今、読み終えたばかりだから『愛と逃亡』が最高傑作に感じるだけの話かもしれませんが。『百姓二代』を読んだ直後なら、こりゃあ最高傑作だと感じる人ですからね、私は) ただ、そう思ったのには理由があります。

単行本『愛と逃亡』が人間像同人会から発行されたのは1989年(平成元年)11月です。しかし、同人雑誌「人間像」に『愛と逃亡』が発表されたのは1965年(昭和40年)11月なんですね。ちなみに、『支笏湖』は1967年(昭和42年)、『女囚の記』は1969年(昭和44年)。どういう理由があったのかよくわからないのだけど、じつに二十年以上の時間をかけて熟成された作品群なので、その構造に何の揺るぎもない、針山和美にしか書けない小宇宙になっていると感じるのです。単行本『愛と逃亡』を人間像ライブラリーにアップできることを誇りに思う。


 
▼ 山麓文学  
  あらや   ..2021/02/04(木) 12:29  No.803
  『愛と逃亡』の復刻作業、完了しました。いやー、感じ入りました。

『愛と逃亡』の〈喜茂別〉から〈小樽〉へ流れる展開。『支笏湖』の〈倶知安〉〜〈支笏湖〉の展開。『女囚の記』の〈京極〉〜〈小樽〉〜〈喜茂別〉という展開。ラストに〈胆振線〉がちらっと出て来る凄技に感動した。ここまで人間像ライブラリーをやって来て、よかった。まさに山麓文学の誕生。針山ワールドの誕生だ。








     + Powered By 21style +